キツいのに給料が安すぎる…? 若者の“製造業離れ”が招く「ものづくり大国ニッポンの大衰退」
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出生数が急減している人口減少日本で各業種・職種や公共サービスに何が起こるのか?ものづくり大国から大きく後退していく未来もやってくる?
ベストセラー『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。


ものづくり大国の難題
天然資源に乏しい日本は「ものづくりの国」である。近年、海外に拠点を移した企業も多く日本のGDP(国内総生産)における製造業の比重は下がってはいるが、2020年時点において約2割を占めており、依然としてわが国の中心的な産業である。

新たなイノベーションや技術を生み出す製造業は“日本の砦”ともいえる存在であり、日本経済にとっては「2割」以上の意味を持っている。

いま、製造業は世界的に過渡期にある。カーボンニュートラル、人権尊重、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった事業環境の大きな転換期を迎えているためだ。

ロシアのウクライナ侵攻による資源高や半導体などの部品、素材不足、あるいはサプライチェーン全体のサイバーセキュリティー対策といったさまざまな課題にも直面している。

こうした喫緊の課題への対応の困難さもさることながら、日本の製造業には今後、人口減少の影響が大きくのしかかってくる。

若い就業者が100万人以上減少
まずは製造の現場の人手不足だ。

経済産業省などの「2022年版ものづくり白書」によれば、日本の就業者数は2002年には6330万人だったが、2021年には6713万人に増えた。しかし、この間、製造業の就業者数は1202万人(就業者全体の19.0%)から1045万人(同15.6%)へと157万人減っている。

むろん、就業者の総数が減ったことがただちに問題というわけではない。機械の高度化に伴ってオートメーション化が進み、昭和時代のように生産ラインに多くの女性就業者が並んで作業をするという光景はほとんど見かけなくなった。

さらには製造拠点の海外展開によって「職場」そのものが大きく減ったという要因もある。就業者の総数が長期下落傾向をたどったのは自然の流れだ。

では、何が問題かといえば、年齢構成の変化だ。製造の現場が急速に高年齢化しているのである。

「2022年版ものづくり白書」によれば、34歳以下の就業者を2002年(384万人)と2021年(263万人)とで比較すると、この20年ほどで121万人も減少している。製造業全体で見ると、2021年時点の34歳以下の就業者は25.2%でしかない。

オートメーション化や工場の海外移転などによって就業者数を減らしコストカットをしてきた企業が多いが、結果として若い就業者を減らすことになったということだ。

だが、いくらオートメーション化を進めていっても、すべての工場が人をまったく必要としなくなるわけではない。日本の製造業全体として最低限必要な人数というのがある。それが確保できなくなってきているのだ。

長期にわたって若者が製造業から離れていったことの弊害は大きい。

国内工場が相次いで閉鎖されたこともあって、次の世代の若者たちは先輩などから工場における仕事の内容を聞いたり、工場そのものに接したりする機会が少なくなった。それは工場に勤務した場合の自分の将来像がつかみづらくなったということだ。

「きつい仕事の割に給料が安い」といった、必ずしも事実ではない勝手なイメージの広がりをこのまま許すことになれば、製造業を身近に感じない人がますます増えることとなる。