花粉症対策の根幹であり、最も重要なのはスギやヒノキの森林をできる限り花粉を出さない森林に転換していくことだ。林野庁はこうした「発生源対策」に長年取り組んできたが、具体的な成果は乏しいのが実態だ。

今回の政府による対策強化で林野庁が主眼を置くのは「罹患(りかん)者が多く、全国に広く分布しているスギ」だ。国内の人工林1020万ヘクタールのうち、スギ林は4割超を占める。
日本では戦中・戦後の資材や燃料の不足、高度経済成長期の住宅建設需要増などに伴い、成長が早く、加工もしやすいスギが多く植えられるようになった経緯がある。スギは植えてから30年程度で本格的に花粉を出すようになるとされ、1970年代には花粉症が社会問題化するようになった。

このため林野庁は、花粉量が従来品種の1%程度とごくわずかであったり、花粉を全く出さなかったりするスギの品種開発をし、90年代から植え替えを推進してきた。結果、こうした苗木の生産自体は増え、2020年度にはスギ苗木全体の年間生産量の約5割を占めるまでになった。

しかし、肝心の植え替えは進んでいない。林野庁によると、国内のスギ人工林(444万ヘクタール)で少花粉スギなどへの植え替えは累計で推計1%未満だといい、「現時点では花粉症対策としての効果も表れていない状況に思える」という。

https://mainichi.jp/articles/20230510/k00/00m/010/160000c