各業界で深刻なアルバイト不足 「代わりはいくらでもいる」時代は終焉

https://www.news-postseven.com/archives/20230516_1869212.html?DETAIL

「よりどりみどり、選べた時代は終わったのだと思う。昔はコンビニのアルバイトでも求人すれば応募が必ず来て、いろいろ理由をつけて落としたりもしたが、いまは日本語が理解できればそれでいい」

 都心の繁華街にあるコンビニエンスストア、60代のオーナーが語る。

「店が成り立たなくなるのでは、と思うほどアルバイトが不足している。都心に限れば他の店も大なり小なりそうではないか。うちのようなフランチャイズはもちろん、直営店舗もアルバイトが全然集まらない」

 かつてコンビニといえばアルバイトの代名詞、学生アルバイトはもちろん主婦、主夫、そしてフリーターと多くは「アルバイトといえばコンビニ」だったのではないか。失職した場合も「コンビニでバイトすればいいか」は平成の常套句だったように思う。それが主に都市部で不足している。2022年、日本フランチャイズチェーン協会の『コンビニ各社における行動計画の進捗及び 業界の取組状況』でも「急激な社会環境変化への対応遅れ」として、人手不足への対応とその遅れを憂慮している。しかし対策は将来的な省人化、無人化と人口増加が見込める海外へのさらなる進出で、具体的な解決としては厳しい内容だ。

「極端な話かもしれないが、若い人は誰もコンビニなんかで働かない。それくらい来ない。それはもうわかっている。若い人は他にいくらでも働き先があるし、そもそも昔に比べて若い人が少ない。少ない若者が好き好んでコンビニで働くことはない。とくに都心ではそうだ」

 コンビニの仕事は多岐にわたる。以前から「時給に見合わない」「やることが多すぎる」などの不満はあったが、それだけではないのか。

「そんなものは昔からある。安くても、割に合わなくてもバイトに来るのがコンビニだった。こちらもその中から選べた。しかしいまは誰も来ない。若い人は来ない。コンビニが敬遠されているというより、コンビニより働く場所がある、ただそれだけだと思う。ただそれだけ、それが一番怖いことだと思うが、本部も同業者もそれをわかっていない人は多い」

昔は大卒で就職が決まらない子も大勢いた。それも一流大学だ。安い時給で店を仕切ってくれたが、いまはそんな都合のいい若い子は来ない。私は『時代が変わった』と認識しているが、同業のオーナーの中にはその時代の感覚で『優秀な若い子が来ない』と愚痴る者もいるし、ベテランの中にはいまだに『代わりはいくらでも来る』と思っている者もいる。それで来ればいいが来ない。結局そのオーナーが1日中働いている」

 仕事の豊富な都会と地方、地域性もあるのだろうが、やはり「代わりはいくらでもいる」というフレーズは日本における30年間の失われた時代を象徴する言葉だったように思う。あの時代の感覚のままアップデートできずに「人が来ない」「優秀な人を安く使いたい」という経営者はいまだ一定数存在する。優秀な若者を安い時給で使えた旨味が忘れられない。

「いまだに本部の中には店舗スタッフ採用を甘く見ている幹部がいる。氷河期世代の優秀な若者が長期間働いてくれた昔の感覚が抜けないのだと思う。ときに『厳選しろ』などと言われるが、もはやこちらが選べる立場ではない。来てくれたら『働いていただく』になっている。時給は他の外食に比べれば悪くないと思うが、それでも他の人気の仕事に比べれば魅力はないと思う」

都心で一人暮らしかつフリーターの若者、という存在が減ったのではないかとはどういうことか。

「この店舗の近くとなるとワンルームでも最低7、8万はすると思う。昔はもっと安かった。それだけの家賃を出して今どき牛丼屋でアルバイトはしないだろう。できないことはないが、まずしないと思う。いまの若者はいくらでも仕事があるし、私たち世代のような無茶な夢の追い方はしない。正社員で兼業とか、正社員をしながら趣味の延長線上で夢を追うし、それができる。日本の働き方改革や少子化による厚遇からそれができる環境にもあるのかもしれない。そもそもいまの若い人は簡単に正社員になれる。50社100社全落ち、聞いたこともない会社すら落とされてフリーターのまま10年なんて時代とはまったく違う」