凡人の発想には必ず「見落とし」が存在する

 天才ではないふつうの人は広く考えたつもりでも、どうしても考えモレが出てしまいます。とくに、自分が抱える仕事の視点にとらわれ、その範疇内でどう行動しようかと考えてしまいがちです。

 では、こういう見落としを防ぐためには、なにが必要なのでしょうか?

 よく「既存の枠組みを捨てて、柔軟に発想しましょう」みたいなことを言う人がいますが、これはまず実行不可能です。枠組みが見えていないまま考えたからこそ、さきほどの消費材メーカーは発想を広げられなかったのです。枠組みが見えてないのだから、それを捨てようがないわけです。

 発散力が異常に高い天才でもないかぎり、凡人が丸腰で思考を広げようとすると、必ずこういう失敗が起きます。

 これを防いでくれるのがフレームワークです。たとえば、彼らが4Pというフレームワークを参照していれば、どうだったでしょう?

 すぐれたフレームワークは、広く考える(=できるだけたくさんのアイデアを出す)ときのチェックリストとして機能します。

 フレームワークがあることによって、自分がどのエリアについて考えたのかを点検し、どのエリアにまだ考えが及んでいないかを発見できるからです。こうして、アイデアが広がりきっていかない発散の問題をクリアする際の手助けになってくれるのです。

 これが冒頭に書いた「枠組みがあったほうが、より広く考えられる」ということの真意です。つまり、自分たちの思考の枠組みを「意識」できていたほうが、発想は広がりやすくなるということです。

 逆に、枠組みが「無意識」なものにとどまっているときには、必ず思考の「見落とし」が生まれます。ビジネス上のフレームワークは、具体的なケースを代入すれば正解が出てくるような公式ではなく、あくまでも発想を広げたり考えモレを防いだりするための補助ツールなのです。

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