熊本県菊池郡市2市2町を管轄する菊池広域連合消防本部の男性係長=当時(47)=が2020年4月に自殺したのは男性上司のパワーハラスメントが原因として、合志市の遺族が19日、広域連合に約1億1800万円の損害賠償を求める訴訟を熊本地裁に起こした。
訴状によると、男性は18年4月~19年12月ごろ、別の消防署に勤務する上司から携帯電話や内線電話で業務の指示や連絡をたびたび受けたほか、担当ではないのに住宅関連の台帳500~600冊の整理を指示された。職場以外でも、夜勤明けに自宅で長時間の業務指導を長年受けたり、自分が参加しない飲食会へ上司を送迎させられたりした。
遺族は「本来業務でない極めて負荷の大きい行為をさせることで生命や心身が危険にさらされないよう配慮すべき義務を怠った」と広域連合の安全配慮義務違反を主張している。
男性は20年1月にうつ病と診断されて入院し、いったんは退院して職場復帰したものの、4月に再入院した病院で自殺を図り、9日後に死亡した。
広域連合が設置した第三者調査委員会は21年3月、上司の言動をパワハラと認定し、自殺との因果関係も認めた。22年7月には、公務員の労災に当たる公務災害にも認定された。
提訴について、男性の妻(50)は「パワハラを見過ごした組織にも責任がある。命を返してほしい。同じことが二度と起きないよう、提訴を決めた」と話した。広域連合消防本部は「訴状が届き次第、対応を検討する」と説明した。(深川杏樹、豊田宏美)
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