“2代目”になってノルマが厳しくなった
 離職率が桁違いに高いことを示す「数字」もある。それは社員番号だ。入社順に通し番号で付けられ、00年代に入社したAさんは1000番台。
だが、「2、3年前は2万台で、今は4万台だと聞いています」。同社のホームページには社員数6000名(21年12月現在)とあるが、次々と入っては辞めていく会社なのだ。

 兼重氏というカリスマ的ワンマン経営者のもと、急成長を遂げてきたビッグモーターが、おかしくなり始めたのは2018年頃のこと。兼重氏が社長業を息子の宏一氏(35)に任せるようになってからだった。

「宏一さんになって、一段とノルマに対するプレッシャーが厳しくなったと聞いています。私は営業畑だったので、修理工場のことはそこまで詳しくありませんが、私のいた頃、つまり兼重さんが目を光らせている頃は、こんな不正は絶対にさせなかった」

節々で見せてきた「MBA仕込みのガン詰め」
 宏一氏は早稲田大学卒。海外でMBAを取得して入社してきた。小柄な体型から、社内でつけられていたあだ名は「コナンくん」。Aさんも、兼重氏から頼まれ、宏一氏と一緒に現場を回ったことがあるという。

「一言で言うと生意気です。『今の指導ってどういう意味ですか?』『へー。なるほど。効果があると言うことですね』『はい、わかりました』。こんな感じです。低学歴な社員が多い会社で、自分はMBAを取得しているというプライドをどこかしら出す人で……」

 外部での商談でも同様に強気な姿勢で、

「『それじゃダメだと思うんですよ。なぜ用意していないんですか』『つまり、これは準備不足ってことでいいんですね』『それはあなたの権限で言っているということで大丈夫ですよね』と、矢継ぎ早にゴリ詰めしていました。スイッチが入ると止まらないタイプで、MBA仕込みで弁が立つんです」

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