大学生の“大麻逮捕”頻発で「合法化しない日本は時代遅れ」は本当か マトリ元部長は「どの国も<大麻の安全性が確認された>から合法化に踏み切ったわけではない」

大麻は世界で最も乱用されている薬物で、その使用者数は推定1億9200万人とされています(「国連ワールドドラッグレポート」20年)。そして、世界の大麻押収量の4分の1を北米が占めます。アメリカとカナダの使用者数を合わせると、日本の人口の半分近くに及ぶと推計できます。加えて、アメリカではコカイン、ヘロインといったハードドラッグやオピオイドの問題もあります。取り締まり機関という限られた社会資源で、より重大な課題に対応するためには、大麻を容認せざるを得ない。その上で、容認するならば税収を確保して市民感情を和らげようということです。どの国も、決して<大麻の安全性が確認された>から合法化に踏み切ったわけではないのです。

カナダにとっての大麻合法化は「苦肉の策」

カナダのトルドー首相は、「大麻の不正取引で、犯罪組織が年60億カナダドル(約5000億円)もの利益を得ているという推計もある。現行法は子どもたちを守るために機能していない」と、嗜好用大麻解禁の正当性を主張し、大麻の合法化に踏み切りました。少々分かりづらいので、経緯について私なりの解説を加えてみます。

・大麻乱用が爆発的に広がり、取り締まりが限界に達している。

・しかも、約60億カナダドルと試算される大麻の密売収益の多くは犯罪組織に流れている。

・大麻はヘロイン、コカイン、覚醒剤等のハードドラッグと比較して有害性が少ない。

・それならば、アルコールやタバコと同じ位置づけで国の管理下に置き、犯罪組織に膨大な資金が流れるのを阻止すべきではないか。

・国が生産と流通を管理することで若者の大麻使用も抑制できる。

・新たな大麻ビジネスを容認する代わりに課税すれば、税収増にも繋がる。

端的に言えば、カナダにとっての大麻合法化は「苦肉の策」なのです。決して、<大麻は健康被害のない薬物>と国が認めた上で、合法化されたわけではありません。「もう蔓延を喰い止める手段が見当たらない。それならば、禁止するのではなく、新たな制度を設けて管理しよう」となったわけです。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/3bc03df1aa07247fb331d7047bc91572bd3bed28?page=2