学校に行けなくても「だいじょうぶ」 夏休み明け、大人ができること

夏休みが終わり、2学期がスタートするこの時期は、子どもの自殺や不登校が増えるとされる。岐阜大大学院教授で小児神経専門医の加藤善一郎さんは、子どもたちには学校が「戦場」のように見えるのではないかと指摘する。子どもが安心感を取り戻すために、周囲の大人たちは何を心がけるべきか。

加藤さんは、年間約200人の不登校の児童生徒を診察してきた。この時期になると顔が青ざめていたり、「死にたい」と口にしたりするケースを多く目にするという。

 長期休み明けは、子どもたちが学校生活に戻らなければいけないというプレッシャーを抱えがちだ。学校には校則のほか、授業の3分前には着席するなど暗黙のルールが存在する場合もあり、「子どもたちは常にせき立てられて過ごしている」と加藤さんは話す。

 特に2学期は中学や高校では進路を本格的に考え始める時期に入り、初日からテストを実施する学校もある。加藤さんは、子どもの体質や発達特性に加えて、こうした学校の仕組みも不登校の要因の一つに挙げる。

 加藤さんが特に危惧するのは、学校生活の中で、子どもが抱く「だいじょうぶ感」が擦り減っていくことだという。加藤さんはこの言葉を、苦手なことがあっても、自信が持てなくても、見守られていると実感できて安心感を得られることだと定義。「周りの大人が『いま困っていることがあっても、あなたの将来は大丈夫』と伝え、サポートしていくことが必要」と強調する。

 学校に行きたい気持ちがあり「明日は行く」と話す子どもでも、いざとなると体が動かないこともある。「その場合は休ませてほしい。1日休めば登校できる子もいるし、そうでなければ限界だったということだから」と加藤さん。学校に行きづらいと感じる子どもたちに寄り添うため、「まず小さな一人の人として尊重し、話に耳を傾ける。人対人の関係を作ることが大切ではないか」とアドバイスする。【田中理知】

 ◇登校か休むか…「チェックリスト」完成

 学校を休ませるべきかどうか――。そんな悩みを抱える保護者向けの「チェックリスト」が完成した。作成したのは、不登校支援などに携わる3団体。無理に登校を続けて心や体に影響が及ぶことを避け、子どもを追い詰めないようにすることが目的という。

 チェックリストは、「学校に行きたくないと言っている」「課題や宿題が提出できないことがある」など20項目。親や教員など本人以外が項目ごとに「はい」か「いいえ」で選択し、全問終了後、「休ませましょう」などの回答やアドバイスが得られる。

 関わったのは、フリースクールを運営する「Branch」、不登校の学習支援をする「キズキ共育塾」、不登校についての情報発信をするNPO「全国不登校新聞社」。精神科医の松本俊彦氏が監修した。

 文部科学省の2021年度の調査によると、小中学校の不登校の児童生徒数は9年連続で増加し、24万4940人と過去最多だった。「夏休み明け前後は子どもも緊張し、不安に思っている。いま行けなくても大丈夫、何とかなると伝えてほしい」と不登校新聞社の石井志昂代表は話す。

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