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富士山が世界文化遺産に登録されたのは’13年6月22日。このとき、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)の専門家たちが、事前に富士山を訪れ、調査した。富士山は登録が認められたものの、カンボジアで行われた世界遺産委員会の席上、イコモスから多くの注文がつけられた。

「富士山について20分ほどのプレゼンがありました。そのうちの5分間は富士山を褒めました。しかし、残りの15分間は、ゴミの放置やし尿の垂れ流しなどの恥ずかしい現場写真を写し出しながら、非常に厳しい指摘がありました」

イコモスからは「国や県が作成した包括的保存計画を抜本的に見直すこと」「入山制限について検討し、実施すること」「富士山信仰の巡礼道として登山道を整備すること」「富士五湖などの開発に対する制御の措置を行うこと」などの宿題が出され、’16年の世界遺産委員会までに、これらに対して「保全状況報告書」を提出するように求められたのだ。

それにしても、「富士山にし尿を垂れ流す」とは、どういうことか?

「5合目以上には42ヵ所の山小屋があり、トイレが併設されています。夏の間は、し尿を溜めておき、閉山するときに、次年度に空状態で使用するために、斜面に垂れ流します。今まで約40年間にわたって垂れ流してきた結果、トイレットペーパーが、山肌に何キロメートルにもわたってへばりつき、“白い川”のような痕跡を残しています」


「日本が提出した報告書には、登山者数の実態・正常化に対する評価、マイカー規制に関する検討、山小屋の宿泊状況などの実態調査、協力金に関わる検討などを行うとしました。イコモスもそれで了承したんです。

しかし、現実はどうなっていますか? 無謀な弾丸登山が増えて危険度が増し、まったく具体策が見出せない。登山道には手すりもなく、途中、鎖につかまって登る危険な場所もある。安全登山のための整備はまったくなされていません」

翻って海外はどうなのか。アメリカのヨセミテ国立公園も世界自然遺産に登録されている。広さは東京都の2倍! そんな広いところでも入山制限が行われていて、1日に入れるのは1万1550人。入山するときは車1台35ドルの入山料を払わなくてはならない。

「入山料を払うと入山証が渡され、園内で入山証の提示を求められたとき持っていないと逮捕され、罰金を払わされます」

こうしたシステムになっているのは、ヨセミテ国立公園だけではない。ニュージーランドの世界複合遺産・トンガリロ国立公園をはじめとして、海外では当然のように行われていることだという。

トンガリロ国立公園には10回近く訪れている渡辺氏だが、行くたびに登山道が整備され、手すりができ、災害用シェルターが造られたり、山小屋が快適になっていると言う。

「トンガリロ国立公園では、売り上げに対して山小屋・ゴルフ場には6%、スキー場には15%の税金がかかります。それで年間2億円の資金が確保される。その資金を活用して、下水処理場を造り、ヘリコプターでし尿を下水処理場まで運搬・処理しています」

「なんのために世界遺産に申請したのか。今となっては政治家のパフォーマンスだったとしか思えない」

と、渡辺氏の怒りは激しさを増す。

山梨県では今、富士山に鉄道を走らせようとする「富士山登山鉄道構想」を検討している。年間利用者として見込んでいるのは300万人。これ以上、富士山に人を送り込んで観光の山にして、どうしようというのか。

「ヨセミテ国立公園とトンガリロ国立公園のレンジャーと3人で富士山に登ったとき、あまりの無秩序、無法状態に呆れ、2人から『富士山は世界で最低の山だ』『世界遺産になる価値はない』と言われました。