何が彼らを惹きつけるのか。豊洲のタワマンに住む中国人男性が言う。

「豊洲の街並みは中国とよく似ているのが良いんです。銀座までタクシーで10分程度と都心に出やすく、買い物もしやすい。街が新しいので活気がありますね」

 豊洲駅周辺を歩いてみると、目抜き通りは片側5車線と道幅が広く、都心のゴミゴミとした窮屈さは皆無。大ぶりな建物群や巨大ショッピングモール「ららぽーと豊洲」、街のあちこちに点在するシェアサイクルは、確かに中国の都市空間を彷彿とさせる。羽田空港まで直通バスで20分というアクセスの良さも、外国人には魅力的だろう。前出の中国人男性が続ける。

「うちのタワマンの中国人率は2割ぐらい。ウィーチャット(対話アプリ)のグループには中国人住民が200人ぐらい登録していて、新オープンのお店や美味しいご飯屋さんなどの情報交換をしています」

豊洲駅から徒歩数分のこのタワマンの販売価格は1億~2億円ほどで、共用スペースにはフィットネスルームや卓球台、コワーキングスペースやパーティールームを完備している。

 中国国内では集合住宅の敷地ごとに高いフェンスや門を設けて緩やかなゲーテッドコミュニティを形成するのが一般的だが、1000戸以上の人々が暮らす豊洲のタワマンは、中国人にとって母国のコミュニティにも似た安心感がある、まさに“チャイナタワマン”と呼べるものだ。

 だが、日本人居住者の心境は複雑だ。同じタワマンに住む日本人女性は、声をひそめて言う。

「入居するまで、こんなに中国人が多いとは思いませんでした。この先どんどん増えて、中国人だらけになったらどうなるんだろうと不安です」

 購入した物件がチャイナタワマンと気づかなかったのも無理はない。

 ここに暮らす中国人住民は爆買いやパクリ製品などから想起される旧来の中国人像とは一線を画しており、教育水準の高いグローバル人材が大半を占める。見た目や雰囲気は日本や欧米のビジネスマン同様にシックで洗練されており、ブランドロゴをこれ見よがしに見せつけるようなことはしない。声量も決して大きすぎることはなく、マナー面の問題も特にない。

 こうした“先進国仕様の中国人”は日本社会にさり気なく溶け込んでおり、隣近所に住んでいても気づかれにくい。実際、某チャイナタワマンに住む日本人男性はこう言った。

「中国の方がそんなにたくさん住んでいるなんて、全然感じませんね」

https://news.yahoo.co.jp/articles/a193d001a8780a870a093bfc70aaf553642ba23a