成人男性の3人に1人…深い悩み 薄毛、早め治療で改善期待

成人男性の三人に一人がなるとされる「薄毛」。年齢とともに少しずつ進行し、見た目の問題から悩む人は多い。最近は原因の研究が進み、早期に治療すれば改善が期待できるようになってきた。

「薄毛を気にしない人もいれば、他人の目が気になって精神的に追い詰められる人もいる。悩んでいるなら一度、皮膚科に相談してほしい」。浜松医科大皮膚科学講座病院教授で、脱毛症専門外来を担当する伊藤泰介さん(53)は言う。

髪の毛は通常、二~六年の「成長期」に長く太くなった後、成長が止まる「休止期」(二~三カ月)を経て生え替わるサイクルを繰り返している。男性の髪が薄くなるのは「男性型脱毛症」(AGA)がほとんど。男性ホルモンが毛根の働きを鈍くし、成長期を数カ月~一年に短くする。髪の毛は一カ月に一センチほど伸びるが、AGAの部分は十分に育たないまま、細く短い状態で成長が止まってしまい、抜けやすくもなる。

男性ホルモンは頭頂部と前頭部(生え際)の毛根に作用しやすく、そこから少しずつ薄毛が広がっていくのが特徴。発症時期や進行速度には遺伝や体質による個人差があるが、発症頻度は二十代で10%、三十代で20%、四十代で30%、五十代以上は40%を超える。

治療は二〇一七年に日本皮膚科学会が改定した診療ガイドラインに基づき、飲み薬と塗り薬のいずれかを使うか、併用するのが基本だ。飲み薬の「フィナステリド」「デュタステリド」は、男性ホルモンが毛根に与える影響を抑えるが、まれに性機能障害や肝機能障害が生じる。塗り薬の「ミノキシジル」は一日二回、頭皮に塗って発毛を促す。古い髪の毛が生え替わるので一時的に抜け毛を多く感じることがあり、低血圧やむくみなどの副作用も起こり得る。

一方で、国内未承認のミノキシジルの錠剤を海外から輸入して処方する医療機関もある。伊藤さんは「海外で重度の高血圧の薬として承認され使われているもので、心臓など循環器に持病がある人は重大な副作用が起こる恐れもある」と警鐘を鳴らす。

静岡県の公務員男性(47)は、コロナ禍でオンライン会議が増えた二年ほど前、画面に映る自分を見て、頭頂部の髪の毛が薄くなっていることに気付いた。「父親や祖父は薄毛ではなく、『まさか自分が』と驚いた。このまま髪の毛が減っていくのが怖くて思い悩んだ」と振り返る。

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