「女性器を切らないで」自分が苦しんだ伝統から娘を守る母の戦い変わりゆく儀式へ初の潜入取材
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/81dc1486ad3505a9916517401cd5c04ec15f7e2a
女性器切除――アフリカや中東の国々を中心に、女性器を切除する古くからの慣習がある。FGMと呼ばれ、世界で2億人の女性が経験しているといわれる一種の通過儀礼だ。
命の危険も伴う人権侵害としてユニセフ(国連児童基金)が根絶をめざし、英国では法整備を進め、近年、娘に受けさせた母親が有罪判決を受けた。
こうした国際社会からの批判を受け、女性の90パーセントがFGMを経験するとされる西アフリカのシエラレオネでは、「イエローボンド」と呼ばれる「切らないFGM儀式」が広がりつつある。
これまで撮影は許されてこなかったが、私自身がその儀式を受けることを条件に、FGMに反対する母娘への同行取材が認められた。新たな動きは、深く根付いた伝統にどのような変革を起こせるのか。
国際女性デーの3月8日に合わせ、変化の兆しが見えるシエラレオネでの取り組みを伝える。(Yahoo!ニュース ドキュメンタリー)

女性器を切らない選択 血の流れないFGM

18年前のことだ。5歳だったファタマタは、ソウェイ(村の年長の女性)たちが家に自分を迎えにきた時、ベッドの下に隠れた。なぜ自分が逃げ回ったのかは、わからない。
FGMとは何かをまだ知らなかったはずなのに、ソウェイたちの異様な雰囲気をどこか感じて抵抗した。それでも彼女は儀式に連れていかれた。

その夜の光景を、今でも夢に見る。火を囲み、太鼓を叩きながら歌うソウェイたち。カミソリを持った手が自分に近づいてくる。
他の手が伸びてきて押さえつけられる。女児たちの泣き叫ぶ声と太鼓の音が、一晩中続いた。そしてファタマタは、女性器の外部を失った。

儀式はファタマタを「一人前の完全な女性」にさせ、彼女は社会に受け入れられた。出産を経験し、娘のカディジャは9歳になった。
周りから何度か娘をFGMの儀式へ送るように言われたが、避けてきた。自分自身があの夜の悪夢にいまだにうなされるのに、どうして娘を同じ目に遭わせることができるだろうか。


つづく