渡り鳥が運搬か、養鶏場は対策徹底を 鳥インフル専門家が呼びかけ
家畜で今季国内初となる高病原性鳥インフルエンザが、秋田県横手市の養鶏場で確認された。鳥類の感染症に詳しい大槻公一・鳥取大名誉教授（獣医学博士）は、ウイルスを運んできたとみられる北方からの渡り鳥は飛来が続いており、養鶏場の対策徹底が大切だと指摘する。
横手市で確認されたウイルスは、遺伝子解析の結果、H5N8亜型と判明した。農林水産省によると昨年度、国内18道府県の養鶏場で発生した鳥インフルはすべてこのタイプだった。大槻氏は「2014年以降、毎年、欧州などで発生している。鳥類の間での感染力が強く、ニワトリなどの家禽（かきん）に感染すると9割以上は死んでしまう」と話す。
感染経路については「シベリアからサハリン、北海道を通って飛んできたカモ類などの渡り鳥がウイルスを持ち込んだのだろう」と語る。「何千キロもの飛行は鳥にストレスがかかる。抵抗力が落ちて発症した幼鳥が休憩中、動けなくなり、テンやイタチなどの野生動物に食べられたのかもしれない。こうして感染した動物が養鶏場に入り込んだ可能性がある」と指摘する。
大槻氏によると、カモ類は腸管などにウイルスを抱えたまま、夏の間はロシア・シベリアや中国東北部で繁殖する。10月になると、越冬のため南下を開始。例年12月まで、日本に続々と飛来する。春になって渡り鳥の北帰行が進むまでは、国内での感染拡大に警戒を続ける必要があるという。 昨年度は九州や四国など関東以西の養鶏場で鳥インフルが多発した一方で、北東北の養鶏場では確認されなかった。県内では今回が初確認だ。大槻氏は「昨季も東北で野鳥の感染例は確認されており、養鶏場で発生してもおかしくなかった」としたうえで、「東北は大規模な養鶏場が多く、全体的に感染対策への意識が高かったため、防げていた面もあったかもしれない」と推察する。
横手市の鶏舎は、国の調査の結果、防鳥ネットに破損があり、スズメが入り込んでいた。鶏舎の壁に3センチほどの隙間があり、鶏舎内にネズミのものとみられるフンや足跡があったことも判明した。「生産者に対する行政のチェックに抜かりがなかったか。スズメも野鳥の死骸やフンに接触すれば、ウイルスの運搬役になり得る」と大槻氏は指摘したうえで、生産農家に向けて、こうアドバイスする。
「冬に自然界のエサが少なくなると、野生動物にとって、常時エサのある鶏舎はありがたい場所となる。イタチやネズミなどが侵入しないよう、鶏舎の網に穴が開いていないかなどの確認を徹底してほしい」。靴底などに野鳥のフンを付着させて鶏舎に持ち込むことがないよう、長靴や作業服の着替えにも注意して欲しいという。
一般の人々にも、道路などで野鳥が死んでいるのを見つけたら、素手で触らず、県や地元の市町村に連絡するよう求めたうえで、「鳥インフルはヒトへの感染力は低いので神経質になりすぎる必要はないが、犬や猫が感染する可能性もあるので、散歩などの際にペットの管理にも注意してほしい」と話している。（佐藤仁彦）
https://www.asahi.com/sp/articles/ASPCD6T48PCDULUC00W.html
