尿素ショック(上)=尿素水奪い合い、「アドブルー持ってきて」
11/22 19:00

 「とにかくアドブルーを持ってきて欲しい」。

 仕入れに困った運送会社の購買担当者がこう懇願した。これに対し大手アドブルー販売業者は冷たくあしらったという。11月以降、運送会社からの注文が殺到し、供給能力を上回った。「平時に散々買い叩いておいて、困ったときだけ泣きつかれても助けられない」(大手販売業者)。

 アドブルーはトラックやバスなどに搭載された尿素SCRシステムに使用する車両用尿素水だ。ディーゼルエンジンから排出される窒素酸化物(NOx)を除去する。排ガス規制強化に伴い、日本でも2005年から導入が進み、今ではシステム搭載車両が一般的になっている。

 この車両は尿素水を補給しなければ、エンジンがかからない。運送会社にとって尿素水の枯渇は操業停止に直結する死活問題だが、今これが手に入りづらくなっている。

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尿素ショック(中)=尿素不足が深刻、「お金を出しても買えない」

 アドブルーなど車両用尿素水が不足した背景には、原料の尿素の輸入量が激減したことがある。

 きっかけは天然ガス、石炭価格の世界的な高騰だ。尿素は主にこれらの化石燃料から製造しているが、液化天然ガス(LNG)価格は前年と比べ約5倍、石炭は約3倍となった。尿素の製造コストが大幅に上昇し、採算が急速に悪化。世界の尿素メーカーの工場稼働停止が相次ぎ、供給が引き締まった。

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 需給の逼迫で、足元の輸入尿素は日本着価格でトンあたり1,000ドルに迫る。前年対比で約4倍となり、過去最高を突破したという。ただ、すでに価格の問題ではなくなりつつあるようだ。「高くても買えるのであればよいが、お金を出しても買えない」(アドブルーメーカー)との悲痛の声が聞こえ始めている。

尿素ショック(下)=韓国は対岸の火事でない、「尿素水8割国産」は誤解

 「日本で使用する尿素水の8割は国産。韓国のような品薄にはならない」。

 アドブルーなど車両用尿素水の原料尿素をほぼ全量中国からの輸入に頼ってきた韓国で尿素水不足が問題となった際によく耳にした言説だ。しかし、これには誤解が含まれているというのが、国内の尿素水関係者の常識だ。

 一般に尿素は、まず天然ガスや石炭などの化石燃料からアンモニアを作り、アンモニアから製造する。農業用窒素肥料のほかに、工業用としては尿素水や、接着剤などを作るメラミンの原料になる。

 「8割が国産」というのは、アンモニアと混同されているとみられている。日本のアンモニアの需要は年間約110万トンで、三井化学、日産化学、昭和電工、宇部興産の4社でそのうちの約90万トンを製造している。

 一方、尿素は三井化学と日産化学しか作っていない。尿素はさまざまな製品の原料となるため、両メーカーが尿素水に振り向けている尿素の割合は必ずしも大きくない。

 三井化学と日産化学が製造するアドブルーをそれぞれ販売する三井物産プラスチックと日星産業の国内の販売シェアは4割程度とされている。両メーカーが製造する国産尿素の一部が別の尿素水メーカーに流れていることを考慮しても5割程度は輸入尿素だという。

 日本が21年1〜9月に輸入した工業用尿素の8割程度は中国産とみられる。このことは中国から尿素を全く輸入できなくなった場合、尿素水のおよそ4割が自国で生産できなくなることを意味する。

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全文はソース参照
https://www.rim-intelligence.co.jp/news/news-domestic/1700773.html
https://www.rim-intelligence.co.jp/news/news-domestic/1700774.html
https://www.rim-intelligence.co.jp/news/news-domestic/1700775.html