世界が「脱炭素」に舵を切るなか、注目を浴びるEV(電気自動車)産業。だが、EVに欠かせないリチウムイオン電池に使われる鉱物コバルトは、奴隷のような待遇を受けるコンゴの人々によって採掘されている。劣悪な労働環境の実態を英紙が取材した。

【画像】時給46円…環境に優しいEV車のために“奴隷労働”させられるコンゴの人々

鉱山企業と労働者は“主人と奴隷”
ピエール(仮名)にとって、テスラやルノー、ボルボといった有名企業の名前は何の意味も持たない。彼はEV(電気自動車)の存在すら知らない。

それでもピエールは毎朝、砂ぼこりが舞い、喧騒に満ちたフングルーメの街で働く。フングルーメは、コンゴ民主共和国南部の鉱山地帯の一角にある。ピエールはそこで、EV製造の最初の供給線を担う。彼がいなければ、EV革命も、未来の脱炭素社会も実現しない。

彼は世界で争奪戦が繰り広げられているコバルトの採掘者だ。ほとんどのEVの動力源であるリチウムイオン電池には、このコバルトが必要不可欠である。

ピエールの賃金は日給2.60ポンド(約400円)だが、昼食時間も休まずに働き、何時間も残業すれば、3.70ポンドくらいにはなるという。

昼食も別に楽しみではない。鉱山企業から支給されるのは小さなロールパン2個とジュース1パックだけだから、と彼は言う。

「賃金もほんの少ししかもらえず、いつも頭を抱えています……。鉱山企業ばかりたくさん儲けて、私たちはタダ働きも同然なんです」

仕事を1日でも休めば、給料からその分が差し引かれる。「文句なんて言えません。そんなことをしたらたちまちクビです」と、賃貸しているレンガ造りの小屋の土間にしゃがみこみながらピエールは言う。

「鉱山企業と私たちの関係は、“主人と奴隷”みたいなものです」
https://news.yahoo.co.jp/articles/44eb262f7bafc257c3b31ffbb3115dd66cfb410f
時給46円…人種差別や人権侵害も