なぜ今、ピスタチオなのか? 流行の要因は五つ考えられる。

一つ目は、なんといっても独特の濃厚な香りと個性的な味。
最近、ハリッサや麻辣味など刺激的な味が流行していることもあり、目新しい刺激的な味を求める嗜好に、ピスタチオはちょうどよくハマったと言える。

日本は緑豊かな国で緑色のバリエーションは多いが、ピスタチオクリームのスモーキーなパステルカラーは、あまりない色合いだった。
その新鮮さが、二つ目の人気の理由と考えられる。
ファッションでも流行しているのは、その色を美しいと思う人たちが多いからだろう。

最近はパクチーやチョコミント、抹茶など、緑色の食品がいくつもヒットしている。
ストレスフルな時代だからこそ、癒し系の緑色が人気になるのかもしれない。
SNSへの写真投稿が活発な今、食品でも色は今まで以上に重要な要素の一つである。

三つめは、健康的な食品であること。
種子であるナッツ類は栄養が豊富だが、ピスタチオも食物繊維、タンパク質、ビタミンB群、カリウム、鉄、銅などが豊富に含まれている。

ピスタチオはもともと地中海沿岸発祥で、中東地域を中心に食べられてきた。
世界最大の生産地はイラン。
ヨーロッパでも人気があり、イタリアやギリシャなどで生産されている。
フランス菓子などでもよく使われることから、日本でも認知度が上がったと言える。
また、成城石井のピスタチオスプレッドの生産国は、イタリアである。

中東料理を日本で食べられる店は多くないが、最近中東の食はいくつもヒットしている。
先に挙げたハリッサも中東の合わせ調味料、トルコ料理のケバブはすっかりおなじみだし、ひよこ豆ペーストのフムスも最近人気を集めている。
10年前に流行したタジン鍋も中東のもの。
注目の中東発祥の食であることが、四つ目の要因。

ヨーロッパで中東料理や中東の食材が人気なのは身近だからで、フランスは元植民地のチュニジアなど北アフリカからの移民が多いし、トルコ移民もヨーロッパでは多い。
中世頃からヨーロッパと中東地域は、戦争や交易などさまざまな形でかかわりが続いてきた。
中東文化の影響はヨーロッパに色濃い。

日本では、シルクロードの時代から中東文化は時折伝わってくる程度だった。
その遠さが、もしかするとときどき入ってくる文化が、新鮮に感じられる要因かもしれない。
ちょうど、ヨーロッパで日本がエキゾチックな遠い国だったように。
日本では、残念ながら紛争のイメージが強いが、近年は、イスラム教徒が食べられるハラルフードへの関心が高まっている。
少し身近になってきたことも、中東の食文化への好奇心を高めているのかもしれない。

最後の要因は、食がトレンド化してから30〜40年経ち、いつの間にか私たちは、「次に来る流行は何か?」「目新しいものはないか?」と、新しい流行を待ち望む体質になってしまっていたことだ。

特にSNSが発達してからは、SNS経由で目新しい食を発見する機会が増えた。
自分もニュースを発信したいから、目新しいものはとりあえず試してみたい、という人が増えているはずだ。
流行が流行を呼び、流行を楽しむことが習慣化している。
ファッションが近年、あまり流行しなくなっている分、トレンドを楽しむ欲望が、ファッションより手軽な食へと向かっている様子がある。

ピスタチオはそういうターゲットの一つだと言える。
しかし、同時にほかの流行がそうであるように、ピスタチオもやがて普通に味とカラーバリエーションの一つになっていきそうな気配を漂わせている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/64da287f14bd67e587640844917cedab95bee05f