レトルトカレー生産量が増えていた 令和の家庭でも人気の「国民食」

 レトルトカレーの生産量が近年、右肩上がりに増えている。手軽さに磨きをかけつつ、味わいも向上させるといった進化が成長をもたらしているようだ。

 日本缶詰びん詰レトルト食品協会によると、2011年に14万9983トンだったレトルトカレーの生産量は、20年には16万4310トンと、およそ1割増えた。

 食材を袋につめて高熱で殺菌処理するレトルト食品は、元々は宇宙食などに用いられていた。一般家庭向けでは、今の大塚食品が1968(昭和43)年に発売した「ボンカレー」が世界初の商品とされる。

 その後、他の食品会社などが次々と参入した結果、いまの市場規模は1970年代初頭の5倍以上に広がった。人気の背景には、国民食とも呼ばれたカレーを、温めるだけで食べられる手軽さがあった。

 最近の成長には、また新しい時代背景があるようだ。「おひとりさま」などの単身世帯や、高齢夫婦など2人世帯の増加といった世帯構成の変化で、1箱あたり10皿分や5皿分のカレールーでは持て余してしまう人がレトルトを活用しているとみられるという。共働き世帯が多くなるなどして、料理を手軽に済ませたいニーズが高まっていることも追い風だ。夏の暑さが厳しさを増すなか、火を長時間使わずに食べられることも人気を高めているとの見方もある。

 技術の進化も後押ししている。2000年代以降、さらに手軽に箱ごと電子レンジで温められる商品が登場。具材の肉を、より柔らかくジューシーに加工する技術も開発された。こうした進化に支えられ、具材を工夫したり、スパイスの種類を増やしたりした高級品も次々に登場。「名店」の味を再現したカレーや、地域の特色を前面に出した「ご当地カレー」も増えた。

 最近は、油分をできるだけ省きつつ、ダシで味わいを補うような低カロリーの商品も登場。非常時に常温でもおいしく食べられるよう、植物油脂を使って工夫した商品も売れているという。
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