加害者家族を支援するNPO法人「World Open Heart」理事長の阿部恭子さんは、ある女性から「息子が事件を起こすのではないか」との相談を受け、「死刑になりたい」と口にする息子と話をしたことがある。

対話を重ねるうちに、彼の中に「人生がイヤ。死にたいけれど、死ねない」「苦しい思いをしているのは、自分だけだ。誰かを巻き込むことで、復讐を果たしたい」などの気持ちがあることがわかったという。

「誰でも、うまくいかないときはあります。自分だけが孤独だと感じているときに、その痛みを周りにもわからせたい、と考えてしまうことはあると思います。大事な人、夢、やりたいことなど、歯止めとなるようなものを作っていくことが、事件の抑止につながるのではないでしょうか」(阿部さん)

阿部さんが話を聞いた女性の当時の夫(息子からは義理の父)も、食卓で犯罪報道を見ながら、「こんなやつ、死刑になれ」と常に口にしていたという。阿部さんは、インターネット上をはじめ、世の中に「死刑」という言葉があふれていることにも危機感を募らせる。

「死刑にならないような事件に対しても、ネット上で『死刑にしろ』という発言をみることがありますし、このようなことを実際に言われた家族もいます。『犯罪者の言いわけは聞きたくない』『なぜ、税金で食べさせなければならないのか』などの言葉をみるたびに、命が軽視されていると感じます」(阿部さん)

https://news.yahoo.co.jp/articles/a5e4864bc195e0d8e9974104b7bbd1623051f2e6