「人を裁く」 高校生想像できず

人を裁く?高校生困惑 23年2月から18歳以上が裁判員候補に

無期、死刑…「想像できない」
現役高校生が裁判員になるかもしれない―。来年4月の改正少年法施行に伴い、裁判員に選ばれる下限の年齢が20歳から18歳に引き下げられる。早ければ2023年にも、卒業を間近に控えた高校生が「無期か、死刑か」といった重い判断を迫られる場面も想定されるが、周知はほぼなされていないのが実情だ。生徒らに戸惑いが広がる中、関係者は法教育の在り方を模索している。

 「自分が人を裁くなんてイメージできない」。札幌市内の高校2年の男子生徒(17)は下限年齢の引き下げを初めて知り、「生死に関わる判断を突然任されたら、みんな困るのでは」と困惑する。後志管内の高校3年の女子生徒(18)は制度参加に関心を寄せつつ「高校生は受験前に限らず時間がない。せめて卒業後にした方がいい」と話した。

 裁判員候補者は衆院選の有権者からくじで選ばれるため、年齢引き下げは、選挙権年齢が18歳に引き下げられた15年の公選法改正時にも検討された。その際は少年法が適用される18、19歳が人を裁くことに異論が出て、公選法に付則を設けて裁判員年齢を20歳以上に据え置いた。

しかし今年5月、18、19歳の厳罰化を図る改正少年法が成立したことに伴い公選法の付則が削除され、裁判員年齢が引き下げられることになった。少年法の在り方を審議した法制審議会の議事録では裁判員年齢を突き詰めて議論した形跡はなく、「裁判員経験者ネットワーク」共同代表世話人の牧野茂弁護士(東京)は「他人の人生に関わる重責を何歳から担うべきなのか。議論を尽くさないまま決まってしまった」と話す。

 「寝耳に水」なのは、生徒たちだけではない。道教委は年齢引き下げを10月以降の報道を通じて把握。来年度から現代社会に代わる必修科目として新設される「公共」では裁判員制度の仕組みも学ぶが、より踏み込んだ法教育の在り方や裁判員を務める際の休みの扱いなど、具体的な対応は白紙だ。

 法務省は若者向けのパンフレットを作成するほか、各地の検察庁が行っている中高生向けの出前講座を活用して周知を進める考え。古川禎久法相は取材に対し「(年齢引き下げを)どのように法教育に反映させていくか、検討を今進めている」と語った。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6411038