モーツァルト、ナポレオン、エジソン、サッチャー、レーガン、スティーブ・ジョブズ…彼らの共通点はショートスリーパーである。
睡眠時間が極端に短いが、アクティブに活動し、歴史的な功績を残している。
見習ってもいいのか？
「確かにそういう方たちは存在します。けれど、モーツァルトは感染症で夭逝、晩年のエジソンは生活習慣病のオンパレード、サッチャーやレーガンは認知症発症で、生涯を通じ健康であったかどうかは甚だ疑問。分割睡眠をしたというスティーブ・ジョブズは５６歳で亡くなりました」
こう話すのは、皮膚専門医で、「睡眠美容」を提唱する岩本麻奈医師。
「睡眠は約９０分間の周期で浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠を繰り返します。かつては成長ホルモン分泌が増える２２時から深夜２時が睡眠のゴールデンタイムと言われました。最近の研究では、時間に関係なく、眠った直後の９０分間に訪れるノンレム睡眠の眠りが深いほど成長ホルモンに分泌量が増えることがわかっています」
このことから、最初の９０分間にぐっすり眠りさえすれば、成長ホルモンのシャワーを浴び、効率的に細胞や脳の疲労を回復できそうだが…。
「極端に短い睡眠で休息も取らず、心身共に健やかに生活できるショートスリーパーというのは、遺伝的に恵まれた、０・５％以下のごく限られた人。人生を楽しむためには、基本はしっかりとした眠りが必要です」
こう説く岩本医師は、長年さまざまな角度から美容医療にアプローチする研究と臨床を続けてきた。
その中で、健康と美しさ、そして豊かな人生を送るためは、高級美容液や最先端治療と同じくらい、ぐっすり眠ることが重要という結論にたどり着いたという。
現在は、専門外来で不眠に悩む男女のサポートも行っている。
「忙しくて徹夜続き」と多忙を自慢し、「寝る間を惜しむ」ことが、なぜか美徳されてきた日本。
データにも表れている。
２０１８年に経済協力開発機構（ＯＥＣＤ）が実施した調査で、加盟国の平均睡眠時間が８時間２７分なのに対し、日本人は７時間２２分。
加盟国中で目立って最下位に甘んじている。
男性より女性のほうが睡眠時間が短いのも日本の特徴だ。
「眠りが十分ではない理由は、寝る時間を削らなければならないほどやることがあるか、眠りたいのに寝付けないつらい症状があるかです。特に睡眠の足りない４０～５０代の女性は、仕事、子育、家事、介護など負担を抱え、自分の時間を犠牲にして他者に尽くす傾向があり、平均睡眠時間は６時間台にまで落ち込んでいます」
そもそも、４０～５０代は男女共にストレスがかかりやすい年齢だという。
「体は疲れているのに考えることが多く、脳が休まらず眠れない。負の連鎖で睡眠不足が蓄積すれば、疲労が持ち越され、脳の老廃物が溜まります。考えられないようなミスをしたり、認知症などの原因となったりすることも。精神的なゆとりがなくなれば、周りに対しても思いやりをもって接することができず、人間関係もギスギスするようになってきます」
こう話す岩本医師自身もかつてはショートスリーパーを自負していた時期があるという。
「ショートスリーパーは遺伝でも努力の成果でもなく、消耗の結果表現だったのです。今さら…ではなく、気づいて努力することに遅すぎることはありません」
https://news.yahoo.co.jp/articles/2b9155d9d4547339f128fe1aa4da9bf48d802229
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