「もし責任が果たされないのであれば、一体なんのための民事裁判だったんだろう、と思います」
伊藤さんは、判決後の記者会見で、大澤さんの賠償金が払われていないことについて、こう語った。
現行法では、判決が確定して損害賠償金が認められたとしても、支払いは債務者(支払いの義務を負っている側)の自主性に任されている。
ただ、支払いがなかった場合、債権者(支払いを請求する側)は、相手方の特定の財産に対して裁判所に「強制執行」を申し立てることができる。

伊藤さんの代理人である山口弁護士によると、強制執行で差し押さえることができる財産は「大まかにいって、不動産・動産(貴金属や高級外車など)、給与、銀行預金がある」という。
しかしこの「強制執行」には二つのハードルがあると、山口弁護士は指摘する。

一つ目のハードルは「強制執行」に要する金銭的な負担が、原告側にあるという点だ。
不動産や動産を差し押さえて競売にかけることはもちろん、銀行預金や給与の差し押さえにも費用がかかる上、さらに時間もかかる。
山口弁護士によると、例えば大澤さんへの強制執行を申し立てて銀行預金を差し押さえるとしても、まずはどこの銀行に口座を持っているかを原告側が探し当てなければならない。
そのため「家の近くの銀行支店の口座を片っ端から差し押さえてみる」(山口弁護士)などの作業をする必要があるという。
「ネットの誹謗中傷の場合、数十万円程度の金額なので、加害者が支払わないとなった場合はそのコスパを考えて、強制執行をしない被害者も多いでしょう」
金銭的な負担はもとより、自分を追い詰めた被告側と接触することでの精神的な負担も大きい。「(強制執行については)現在のところ、白紙(状態)」だという。

「強制執行」へのもう一つのハードル、それは強制執行をしてもそもそも被告側に財産がなく、取り立てができない場合だ。
例えばはすみさんの場合、提訴された後にTwitter上で「財産がない」と表明している(はすみさんのTwitterアカウントは現在は凍結されている)。
もしこのツイートの内容が事実だった場合、強制執行の効果はない、と山口弁護士は指摘する。

https://www.businessinsider.jp/post-247168