本稿の分析は、2021年1月に筆者らが実施したオンライン調査の結果に基づく[2]。調査は楽天インサイトの登録モニターに対して行い、居住地(都道府県)、性別、年齢について、現実の人口比と等しくなるよう割り付けがなされた。回答者の総数は4000人である。

 本調査で焦点となる質問は、「あなたが考える憲法のあり方は、どちらのイメージが強いですか」というものである。憲法のあり方の「イメージ」にはA、Bの両極を用意した。回答者は、「A(B)に近い」「どちらかと言えばA(B)に近い」「どちらとも言えない」の選択肢から一つを選ぶことになる。A、Bの具体的文言は次の通りである。

A:憲法はあくまで国の理想の姿を示すものであるから、政府は、現実の必要に応じて、憲法の文言にとらわれず柔軟に政策決定すべきである。

B:憲法は国家権力を制限する具体的ルールであるから、政府は、現実の必要があるとしても、憲法の文言上許されない政策を採るべきではない。

(中略)

 では、4000人の憲法観はA、Bどちらに近いものであったか。

 回答の集計結果が図1である。「A(B)に近い」ないし「どちらかと言えばA(B)に近い」という回答をまとめて「A寄り(B寄り)」と呼ぶと、「A寄り」が計48%、「B寄り」が計34%になる。つまり、「A寄り」を非立憲主義者、「B寄り」を立憲主義者と単純に分類すれば、回答者の中では、非立憲主義的立場が明確に優勢であった。

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 厳格な立憲主義者である「Bに近い」を選択した人は全体の11%に過ぎず、言い換えると、9割方の人が、「憲法の文言上許されない政策」でも政府はときに実施すべきだと、大なり小なり考えていることになる。状況に応じて、違憲立法を柔軟に(?)認めてよいというのである。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4cca013da266ed42e12f6fc450f936a1b252f057?page=2