8月17日、防衛省の一角で、インドネシア独立の英雄であるスディルマン将軍の銅像への献花式が行われた。昨年からは防衛省の公式行事となり、小野寺五典(いつのり)防衛相、アリフィン・タスリフ駐日大使も列席している。スディルマン将軍は日本軍政時代、日本軍の軍事訓練を受けて郷土防衛義勇軍の大隊長を務め、独立戦争を戦い、初代国軍司令官となった。その名は、ジャカルタをはじめ主要都市の通りに残されるなど、いまなお国民の尊敬を集めている。

 平成23年にインドネシア国防省から寄贈された将軍像は、防衛省の西の端、市ケ谷記念館脇の緑地に、力強く立っていた。東京裁判の法廷となった大講堂などを移設・復元した市ケ谷記念館は、事前予約すれば「市ケ谷台ツアー」の一環として見学できるが、すぐ脇にある将軍像は見学コースに入っていない。私は、市ケ谷記念館をもっと自由に見学できるよう防衛省の管轄外に独立させることを望んでいる。その暁にはぜひ将軍像もセットで公開してほしいが、当面は、せめて市ケ谷台ツアーのコースに将軍像を入れることを提案したい。

 献花式後には、憲政記念館で映画『ムルデカ17805』の上映会が行われた。「ムルデカ」は独立を、「17805」は初代インドネシア大統領・スカルノによって同国の独立宣言が行われた皇紀2605年8月17日の数字を日・月・年の下2桁を並べたものである。公開は平成13年。典型的な戦後教育を受け、日本はアジアの国々にひどいことばかりしてきたと思い込んでいた私は、この映画で目をひらかれた。

 2千人もの日本兵が戦後も帰国せず、350年に及ぶオランダ植民地支配からの独立を勝ち取るべくインドネシア人とともに血を流し続けた。そう知って心を揺さぶられ、自国の歴史に初めて誇りを持てた。日本を骨抜きにするため、価値観を根底から覆す大本となった東京裁判。その法廷の場を睥睨(へいげい)するが如(ごと)く立つスディルマン将軍像から声が聞こえた気がした。「いつまで東京裁判の呪縛にとらわれ続けるのか。日本人よ、ムルデカを!」と。

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