「最後の乗客になった私に、路線バスの運転手が『後ろにおいで』。運転席のすぐそばに呼ばれて...」(北海道・50代女性)

一人旅で、立ち寄った岡山県。途中で乗り込んだ路線バスで、最後の乗客となったKさんに運転手が声をかけてきた。

もう 30年近くも前の事です。

結婚が決まって退職し、少し自分の時間が出来た私は、急に京都への一人旅を思い立ちました。
何の計画も持たず、その日の気分で行く先を決めるという気ままで呑気な楽しい毎日でした。
京都での3日目の朝。
突然の思いつきで、私は新幹線で岡山に向かい、好きだった竹久夢二の美術館へ。
そこで、夢二の生家が現存し、公開されていることを知り、路線バスを調べて乗り込みました。

数名の乗客がいましたが、市街地を離れるに従い、だんだんと減っていき、やがて私1人に。
すると運転手さんから、
「お客さん、後ろにおいで」
と声がかかり、運転席のすぐ後ろの席に案内されました。

名産や観光スポットを教えてくれて...
見るからに観光客という感じだったのでしょう。運転手さんは私に、岡山の名産や観光スポットなどを、色々聞かせてくれました。
そして間もなく夢二生家の停留所というところで、運転手さんは

「バスが一時間に一本しかないので時刻表を見てから生家に行くといい」

と教えてくれました。
そして、帰り道。

やって来たバスに乗り込むと、なんとあの運転手さんがニコニコと笑っていたのです。
運転手さんは
「時間的にこれにまた乗るかな...と思って」

と、驚いたことに私への手土産を用意してくれていました。

驚きと感動で胸が一杯になり、「今朝方、突然岡山へ向かおうと思い立ったのは、
この運転手さんとお会いするためだったのかもしれない」と思ったものです。
その夜、京都のホテルに戻ってから、ホテルの便箋でバス会社あてにお手紙を書いたことを覚えています。
https://j-town.net/2021/11/28329343.html?p=all