長男を睡眠薬で眠らせ、カッターで手首を切ろうとした。うまくいかず、ベルトで首を強く絞めた。抵抗されることはなかった。犯行後、動かなくなった長男の口元を拭き、服を着替えさせ、頬にキスをした。

 次に自らの手首や首元をカッターナイフで切りつけ、包丁を胸に突き立てた。だが、死ねなかった。物干しざおにベルトをかけて首をつろうともしたが、やはり死ねない。遺書に「(長男の)そばで死にたかったな」と書き足した。

 さらに近隣のマンションから飛び降りようとしたが、ここでも死にきれず。帰宅すると家の中を片付け、睡眠薬を大量に服用した。
意識がもうろうとなり、再び近くのマンションから飛び降りようとした際、管理人に発見され、110番を受けて駆けつけた警察に確保された。翌朝になっていた。

11月24日の初公判。裁判長から起訴内容の確認を求められ、黒いスーツを着た女性は小さな声で答えた。背筋を伸ばして座っていたが、傍聴席からは、その目がどこか遠くを見ているように映った。

この日の公判では、関係者の供述調書や陳述書の読み上げもあった。知人らは女性について「常に長男のことを考えて行動し、生活の全てをささげていた」「声をかけても『大丈夫』と気丈に振る舞っていた。どれだけ悩み苦しんでいたのか」などと証言した。女性の兄の調書には「相談はあまりなかった。早く気付くことができれば」と悔やむ心情がつづられていた。

 女性は被告人質問で、長男の生い立ちや障害が生じた理由を自ら説明した。「発語はあったが、とんちんかんなことが多く、コミュニケーションは難しかった」という。進路がうまく決まらず、事件直前にかけて、うつ病が悪化していったことも明かした。

 事件の2日前、女性はかかりつけの医院を訪問し、死にたい気持ちを訴えていたという。翌日には支援学校の担任と面談した。
女性から入所施設の問い合わせを受けた担任は「学校としてあっせんはできないので、福祉事務所に行ってみては」と応じたようだ。
その時の気持ちを裁判員から尋ねられると、女性は「もう少し具体的なアドバイスが欲しかった」と答えた。

 長男殺害を決断した場面については「睡眠薬を飲ませた時には、とりあえずぐっすり寝てほしかった。殺そうという気持ちも少しはあった」と振り返った。遺書を書いた時点で殺害の意思を固めていたという。

 「疲れて、何もかも終わりにしたかった。自分の病気、将来のこと・・・どうしてこの時(に事件を起こしたの)かは、よく分からない」