酒を飲み始めた頃は、アルコールがこんなにも害を及ぼすものだと思ってもみませんでした

現場仕事に慣れず、納期や精度に問題が出ることが増えていました。手順を教えてもらっても、その通りには進まなかったり、心がけて作業しても、できなかったり。顧客からクレームが発生し、上司にどういうことだと問い詰められると、

つい「覚えていません」という言葉が口に出てしまい、ますます怒られる。
失敗をするのが怖くて、できることでも「できません」と予防線を張ってしまう。
それをやめようとすると、今度は言い訳がましくなったり、「はい」と言ってやらずじまいになったりして「やる気のない奴」ととられてしまう。

晩酌を始めたのは、その頃です。30代でした。

劣等感を通り越して無力感を感じました。そうした孤独を忘れさせてくれたのが、酒とゲームでした。ゲームに夢中になってしまったのです。

ゲームにはまったのは、段階をクリアして次の局面に進んだり、アイテムを獲得したりすることで、現実の世界では味わえない“達成感”や“承認”を得られたからです。
仕事から帰宅すると、夕飯を食べて飲みながらゲームに没頭する毎日が続きました。

現実を忘れるために、ゲームに集中し、酒をあおりました。500mlの缶チューハイを1本飲んで、焼酎のロックを5、6杯飲むと頭もぼやけます。テレビの画面が上下するくらい酔って、布団に入ります。

失禁するたび自分が情けなかったです

ベッドの中にも焼酎を持ち込み、目覚めるとまず飲むのです。
そして失禁する

私は臨機応変に新しい行動をとることができない。そんな自分をごまかすために、酒を飲んでいたのです。記憶をなくすまで飲むのが私の飲み方でした。
生きることから逃げるための酒だったんだとわかったとき、やっぱり自分は依存症なんだと思いました。

数年前から、週2回介護のアルバイトを始めました。断酒会とデイケアにも変わらずに通っています。独り身の生活がさみしいこともありますが、人間はみんな孤独な存在で、人生、いいときもあれば悪いときもあると受けとめることができるようになって、

しんどさが減りました。「こんなことがあった」「大変だった」「面白かった」と話せる人、話せる場があるからだと思います。無口だった自分が、今は自分のことを話す時間がたくさんあります。

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