【独自】アビガン処方、車の窓越しに医師「コロナに打ち勝つぞ」…患者「説明理解できず」
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20211206-OYT1T50112/

 千葉県いすみ市の公立病院「いすみ医療センター」で、新型コロナウイルスの治療薬に承認されていない抗ウイルス剤「アビガン」が今夏、不適切に自宅療養者に処方されていた。医療センターでアドバイザーを務めた医師からの説明で、患者は言われるままに薬剤を受け取った。周囲の医療関係者の評価が割れるなか、厚生労働省が問題視しており、千葉県も事実関係を調べる。

 読売新聞の取材に応じた県南部在住の女性は8月下旬、37度以上の発熱と悪寒に襲われ、いすみ市内の病院で抗原検査を受け、陽性判定された。病院から教えられた医師の携帯電話に電話をかけると、いすみ医療センター近くの市有施設を訪ねるよう指示された。

 家族が運転する車で施設を訪ね、医療センターで肺の診察を受けた後、指示に従って女性は車内に戻った。すると、防護服姿の医師が、窓越しにアビガンの効果と副作用を説明するとともに、こう声をかけたという。「コロナに打ち勝つぞ」。女性はもうろうとした状態で処方の同意書にサインした。動物実験で催奇形性の副作用が確認された点の説明を受けたが、「マスクを着用した先生が窓越しに語る内容は、理解できなかった」と振り返る。

 アビガンやステロイド剤、漢方薬などを処方されたが、同意書の控えは渡されなかった。帰宅後、女性が飲んだのは初回分のみ。「コロナの治療薬としては未承認だ」と知り、アビガンの服用を中止した。女性は5日後に回復。残薬の返却は求められていないという。