「僕は漫才でザリガニを水槽に入れ続ける」ウーマン村本大輔がテレビから消えた理由

2017年、僕はテレビから消えた。あの場所に違和感を抱いたからだ。
あの場所に行くのは、子どもの頃からの夢だった。でも、捨てることにした。

理由はこうだ。
水槽の中で生まれたメダカは、水槽の中が自分の世界のすべてになる。
しかし、もし一度でも川に住んだなら、自分のいる世界がいかにおかしいかわかる。
僕は1ヶ月休みをとってアメリカに行きコメディクラブを回ったことがある。
そこではコメディアンたちが、いま社会で起きている理不尽なことをネタにしていた。
移民難民問題や人種差別問題、地球温暖化やLGBTQの問題。

そのときに僕は比べてしまった。日本には芸人が面白いトークをするお笑い番組がたくさんある。
でもそのテーマは「ポンコツの後輩の話」「タクシーの運転手がありえへんという話」
「家族の話」「相方がガサツだという話」だ。僕もそういうものだと思って、そんなネタを話していた。

アメリカで一緒にいた日本人の友達が、ロスのタクシー運転手に「アメリカのコメディは人種差別ネタが多いよね」と言った。
すると運転手は「それがあるからだよ」と言った。「あるからだよ」と聞いたとき、僕は思った。

日本にはないのか?
(略)

僕は、年に一度だけテレビで漫才をさせてもらえる。2017年に出演したとき、試しにそこでその言葉を出してみた。
すると、テレビの仕事はなくなり、嫌いな芸人ランキングの上位に選ばれ、いままでの若いファンの子はいなくなり、街宣車にまで追いかけられた。
水槽の中にザリガニでも入れられたかのように、彼らは不安になり、嫌悪を示した。
それから毎年、僕はその漫才番組の5分を使って、ザリガニを水槽の中に入れ続けている。

ザリガニの正体は”意見”だ。意見を恐れる日本人がいる。無関心な人たちに気づかれることを恐れている。
「民主主義」なんてかっこいいことを言っているが、「無関心主義」のおかげで成り立っている国だ。
無関心とは、「犠牲」を見ないことだ。誰かを下敷きにして、
僕らはその上に座っているという現実に目を向けないから、僕は漫才を使い、そこに目を向けさせる。
https://diamond.jp/articles/-/289011

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https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202112050001276.html