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普通の会社員が47歳で貯蓄1億円に…経済的自立を目指す「FIRE」達成の極意

経済的な自立と早期退職を実現し、お金のために働く生活から解放される「FIRE」(ファイア)という考え方が急速に広がっている。30〜40代で会社を辞め、残りの人生は資産運用で生じる不労所得で生活費を賄う。満員の通勤電車に揺られながらそんな生活に憧れを抱くも、どうせ夢のまた夢…。かと言えば、あながちそうでもないのだという。1億円の資産を築き、25年間続いた会社員生活に見切りをつけた男性は「40代からFIREを目指しても遅くない。サイドFIREならハードルは下げられる」と言い切る。本当に普通の会社員がFIREを実現することなどできるのだろうか。

FIREを達成した人気ブロガー、「おけいどん」こと桶井道さんがアーリーリタイアの現実的テクニックをまとめた著書

■会社員人生を変えた“投資”という武器

「FIREを実現した時は、『縛り』から解放されたと思いました」。関西地方に住む投資家の「おけいどん」こと桶井道さん(48)はこう振り返る。47歳でFIREを達成。今年3月に単行本「今日からFIRE!おけいどん式 40代でも遅くない退職準備&資産形成術」(宝島社)を出版した人気ブロガーだ。

20代の頃は会社前のホテルに泊まりこんで働くほどの“モーレツ社員”。従業員数千人の中で営業成績トップとなり、社長表彰を受けたこともあったという。だが、その成果は賞与にも昇給にも反映されず、次第にやる気を喪失していった。三十路に差し掛かると消化器系の持病も見つかり、昇進も同期に後れを取るようになった。順調に出世していく同期社員に軽い嫉妬心を抱きながら、正社員という地位を守るため会社員人生を全うする。それが普通の選択肢だったかもしれない。しかし桶井さんは違った。投資という武器があったのだ。

株式投資をしていた両親の影響もあり、25歳から株式投資を始め、投資家として経済や社会を見る目を磨いていたという。「株式投資をした方が、出世をして昇給を目指す以上のお金を手にできる」と気づき、先取り貯金・投資で資産を形成していった。

投資資金を捻出するために、無駄遣いをしないのは当たり前。だが爪に火を灯す生活かといえば、さにあらず。「たまには贅沢も。プチ贅沢ではなく、しっかりと贅沢を堪能しました。その方が満足感は長続きし、お金の威力を体験することで資産形成への意欲がさらに生まれるからです」と桶井さんは目を細める。

アーリーリタイアを意識したのは39歳の時だった。勤務先では、55歳で役職定年になると給与が20%カットされる役職定年制度が導入された。年齢を基準に収入が減ることに抵抗感を覚え、「55歳になったら会社を辞める」と心に決めた。40代になると、働き方にも変化が。職場ではマルチタスク、成果主義が徹底されたが、「私の仕事の仕方は丁寧に積み上げ、成果を残すというものでしたが、それは評価されなくなりました」と述懐する。持病の悪化も重なり、次第に会社と自分の間に大きな溝ができるのを感じた。

43歳で時短勤務を選択し、セミリタイアを実現。生活費の一部を資産運用による収入で賄い、不足分を労働収入で得る「サイドFIRE」を達成し、1億円の貯蓄を区切りに47歳で25年間勤務した会社を去った。セミリタイア後に母親の介護を経験し、現在は難病を患う父親の介助をする桶井さんは「これは結果論ですが、介護や介助のためにもFIREして正解でした。自分自身も定年までずっと健康であるとは限りません。経済的自由が選択肢を生みます」としみじみと語る。

■毎月7万円の積み立てで32年後に1億円

潤沢な資産を形成できれば、その運用益で悠々自適の生活を送ることもできるだろう。だが問題は、いかにその資産を形成するか、だ。支出を切り詰め、多くを投資に回すとして、数千万円から1億円もの資産を形成できるものなのか。桶井さんは「方法としては、労働、節約、貯蓄、投資の歯車を回し続けるしかありません。投資は米国株が必須でしょう」と言い切る。

金融広報中央委員会(事務局・日銀)が発表した2020年の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、2人以上世帯が保有する預貯金や有価証券など金融資産の平均額は1436 万円。調査対象世帯の保有額を順番に並べて、その真ん中に位置する中央値は 650 万円だった。

桶井さんによると、米国市場を代表する500銘柄で構成される株価指数「S&P500」に投資するETF(上場投資信託)や投資信託では、1990〜2020年までの30年間でトータルリターン(総収益)が年率11%あったという。特に直近の10年では14%に達していた。