「両親は兄のことしか考える余裕はなく、私はいてもいなくてもいいんじゃないかと思うようになりました」

 学校では、嫌がらせをされるようなことはなかったが、誰ひとり、宏美に優しい言葉をかけてくれる人はいなかった。

「もう仲よくできない」

 そう言って去っていく友達もいた。

 宏美が無視される一方で、遺族となってしまった由紀の周りにはたくさんの生徒が集まり、教員たちも気にかけている様子が目に入るとつらい気持ちになった。

「私が罪を犯したわけでもないのに、どうしてこんな目に遭わなければならないのか、周りの人が全員、信用できなくなりました」

 学校でひとりぼっちになってしまった宏美は勉強をするしかなかった。元々成績はよかったが、皮肉にも事件後、周囲に差をつけてトップになった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/17bc5e401b018a9725fc2f28b708088ccb069409