イスラム教徒の少数民族ロヒンギャの、イギリスやアメリカにいる難民たちが6日、フェイスブックを集団提訴した。ミャンマーでヘイトスピーチを拡散させ、ロヒンギャに対する暴力を助長させたとして、1500億ドル（約17兆円）の損害賠償を求めている。
仏教徒が多数を占めるミャンマーでは、2017年に軍がロヒンギャを弾圧。およそ1万人が殺害されたとみられている。
フェイスブックの運営会社メタは、「人々の安全を守る」ために対策を取ったとしている。
原告側はフェイスブックが、「長年にわたり、憎悪に満ちた危険な誤情報の拡散」を許していたと非難している。
イギリスでロヒンギャ難民の代理を務める弁護士事務所がフェイスブックに宛てた書簡には、以下のことが記されていた。BBCはこの書簡を確認している。
フェイスブックのアルゴリズムが「ロヒンギャの人々に対するヘイトスピーチを増幅させた」
フェイスブックは、ミャンマーの政治状況を把握しているコンテンツ・モデレーターやファクトチェック要員に「投資しなかった」
ロヒンギャに対する暴力を示唆した投稿やアカウントを削除・停止しなかった
慈善団体やメディアからの警告にもかかわらず「適切かつ迅速な対応」を取らなかった
弁護団は米サンフランシスコの裁判所に提訴。「東南アジアの小国の市場で優位に立つために、ロヒンギャの人々の命を引き換えにしようとした」と、フェイスブックを非難している。
訴状では、ロイター通信の調査で明らかになった、フェイスブックへの投稿を取り上げている。そのうちの1つで2013年にあった投稿は、「私たちはヒトラーがユダヤ人にしたのと同じ方法で彼ら（ロヒンギャ）と戦う」書いてあった。また、「ガソリンを注いで火を付ければ、彼らも早くアッラーに会えるだろう」というものものあった。
アメリカの法律では、フェイスブックはユーザーの投稿内容に対する責任からは保護されている。しかしミャンマーの法律にはそのような条項はなく、原告はフェイスブックに責任があると主張している。
ロヒンギャ問題とは
ミャンマー西部を中心に暮らしているロヒンギャは、ミャンマーから不法移民と見なされており、市民権を与えられないなど何十年にもわたって迫害されてきた。
2017年には、ロヒンギャの武装集団が警察署を襲った事件をきっかけに、軍部が掃討作戦を開始。数千人が死亡し、70万人以上が隣国バングラデシュへ逃げた。その他にも恣意（しい）的な殺害や強姦、村落の焼き払いといった人権侵害疑惑が出ている。
フェイスブックはミャンマーに2000万人のユーザーを抱える。ミャンマー国民にとって、フェイスブックは主流あるいは唯一の情報入手・拡散の手段だという。
同社は2018年に、ロヒンギャに対する暴力示唆やヘイトスピーチについて、十分な防止策を取っていなかったと認めている。フェイスブックが依頼した独立調査は、同プラットフォームが人権侵害の拡大を「可能にする環境」を提供していたと指摘した。
国連も同年、憎悪の拡散に対するフェイスブックの対応は「遅く、効果も薄かった」と批判している。
http://a.msn.com/01/ja-jp/AARAU9n?ocid=st
