男性が1本ではなく複数本のペニスをもって生まれる先天異常が「陰茎重複症」である。
1609年にスイスの医師、ヨハネス・ヤコブ・ウェッカーによって最初に報告され、その後、約100例の陰茎重複症が文献で報告されている。5百万〜6百万人の出生に1人の発症率とされる。

 異常の程度は患者ごとに大きく異なり、ペニス以外にも先天性異常を発症していることもある。
尿道は広範囲の異常が見られる場合があり、複数のペニスの尿道が正常に機能する患者もいれば、完全に尿道がない患者もいる。

 陰茎重複症は、妊娠3〜6週までの陰茎の胚発生中に発生するか、妊娠15週での中胚葉の融合の過程で発生すると考えられる。
薬物や感染症などの強力な環境要因が影響を与える可能性があるとされる。

 以前トカナでも紹介した通り、ペニスが2本の陰茎重複症はしばしばニュースとして報じられてきた。
また、出所は不明だが、陰茎重複症の赤ん坊が2本のペニスから放尿する動画も存在する。
最近では、医学誌「Urology Case Reports」にも、2本のペニスのうち1本を切除する手術について報告する論文が掲載された。

 手術を受けたのは7歳男児である。
MRIなどでは、2本の陰茎が完全に発達していて、両方の尿道に正常に尿が流れることが確認された。
手術によって左側のペニスを切除し、左右の尿道を結合した。
また、2本のカテーテルが挿入されたが、1本は術後10日目に、もう1本は術後21日目に除去された。

 さらに珍しい事例として、医学誌「International Journal of Surgery Case Reports」で、ペニスが3本の陰茎重複症が初めて報告された。

 患者は、イラク・ドホークに住むクルド人の赤ん坊(3カ月)だった。
赤ん坊の左側の陰嚢が腫れていて、2つの突起が確認された。
検査によって突起がペニスであることが判明した。
1つめの突起は長さが約2センチの亀頭で、陰茎の根元に付着していた。
もう1つの突起は長さが約1センチで、陰嚢の下にあった。
どちらにも海綿体はあったが、尿道はなかった。

 泌尿器外科と陰茎再建が専門である泌尿器科医が、外科手術によって余分な2本のペニスを切除し、傷口を縫合した。
ペニスが3本ある人間の事例はこれまで医学誌に報告されたことがなかった。
しかし、今回の患者に関しては、既に公開されている陰茎重複症の事例と類似していたため、これらを参考にして手術が行われた。
術後、患者は問題なく退院し、1年間の追跡調査でも異常は報告されなかった。
家族は、患者が思春期や結婚前になったら定期的に病院を訪れさせるようアドバイスされたという。

 陰茎重複症には医学的・倫理的・美容的な側面がそれぞれあるため、手術や術後の対応に困難が伴う。
陰茎重複症患者は長期的なフォローアップを必要とし、その際には学際的なチームのサポートが求められる。

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