「長年、動物虐待の実情を見てきましたが、今回の事件は、事業者が犯したものとして、私が知る限りの最大最悪の虐待事件。とても人間がすることとは思えない、悪魔の所業だと思います」

杉本さんが怒りを抑えられない前代未聞の事件とは、11月末、繁殖業者二人が再逮捕された長野県松本市の事件だ。

事件の概要は次の通り。 

販売用の子犬を繁殖させるために、2ヵ所の施設で合計約1000匹もの犬を劣悪な環境で飼育し、病気の犬に適切な治療を受けさせなかったなどの虐待を続けていたとして、長野県警は11月4日、同県松本市で繁殖場を営む会社を経営していた社長と社員の男の2人を動物愛護法違反(虐待)容疑で逮捕した(11月24日に再逮捕)。

これに先立ち、県警は9月2、3両日に2か所のうちの一つである約450匹を飼育する施設に家宅捜索を実施。そこでは4段〜6段に積み上がった狭いケージに複数の犬が入れられ、糞尿が大量に放置されるなど、不衛生な状況も確認された。中には、乳腺に腫瘍があったり、子宮にうみがたまったり、失明したりしていた犬が58匹いたという。同社はさらに別の場所でも約490匹の犬を飼育しており、合計約1000匹という数は、ペット業者としては全国的にも例を見ない多頭飼育である、と業界関係者は語る。

この繁殖場については、松本市保健所も県警の家宅捜索と同じ日に動物愛護法に基づく立ち入り監査を実施。環境省が定める適正な飼育に必要な基準が守られていなかったとして、10月に文書による勧告をして改善を求めていた。市や関係者によると、立ち入り監査の後に約1000匹の犬の大半が埼玉県内の関係業者に移送されたという。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/90034?page=2
地獄以上の苦しみ…滅菌、麻酔なしの帝王切開
「私自身、最初にその虐待の内容を耳にした時は、正直、言葉を失ってしまいました。そんな酷いことを本当に人間ができるのか……、想像してみてください。

臨月の犬の四肢を荷造り用の紐で結んで思い切り引っ張って身動きが取れないように固定して、獣医師免許をもたないオーナーが滅菌処理をしていない医療器具を使って帝王切開をして、母体から子供を引っ張り出すのです。その後、洗濯しただけの布切れで血液を拭いて、縫合するのですが、それも適当なやり方だったと思われ、内出血を起こしたり、傷口が開いて内臓が出たままで、それらが原因で亡くなった母犬もいたそうです。

しかも、手術に麻酔は使われていなかったことから犬たちはどれほど苦しい思いをして死んでいったのかと思うと……。この話は元従業員であった方の告発によるものですが、目の前でそんなことが行われたら、ショックでいてもたってもいられなくなるのが普通の人間の感情だと思います」

まるで猟奇的な犯罪映画のシーンのような描写だが、これらは紛れもなく実際に人の手で行われてきた、リアルな虐待の内容なのだ。