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古着を切って二重に…生理用品を毎月手作り、娘は恥ずかしいと泣いた

経血をともなう生理にはナプキンなどの生理用品が不可欠だ。ただ、入手に苦労する女性たちはいまも世界各地にいる。

女性の半分、生理用品入手できず
 チョキ、チョキ、チョキ。古着をはさみで切っていく。切った布地は折りたたんで二重に重ねる。1分ほどで完成した、手作りの「即席ナプキン」だ。

 「時間はかけられない。毎月、女4人分で60枚以上作らなきゃいけない」
 レバノンの首都ベイルートの衣料品店に勤めるザイナブさん(38)が言った。夫と離婚し、12〜15歳の3人の娘をひとりで育てる。毎月こうして、自分と3人の娘分のナプキンを作る。

 12歳の三女マリアンさんは昨夏、初潮を迎えた。当時はコロナ禍で学校は週1回だったが、その1日さえ登校を拒んだ。「こんな布切れで、友達の前で血が染み出したらどうするの。恥ずかしい」。泣きじゃくった。結局、1週間の生理中、一歩も出なかった。

 いまレバノンでは、深刻な経済危機で女性の5割以上が適切な生理用品を手に入れられない状態にあるといわれる。子ども用おむつや新聞紙、トイレットペーパーなどで代用する女性もいるという。

 かつて第2次世界大戦後に中東の金融センターとして栄えた時期もあるレバノンでは、2年前に当時の内閣が退陣して以降、経済状況が悪化の一途をたどり、昨年3月には国の借金が返済できない債務不履行に陥った。通貨安で輸入品中心に物価が高騰。コロナ禍で主力産業の観光業が冷え込み、国民の過半数が1日に最低限必要なものが買えない貧困線以下の暮らしを強いられているという。

 ザイナブさんの家では以前なら既製品の使い捨てナプキンを購入できていた。しかし今や高いと4万ポンド。米ドルとの公定レート換算で最大27ドル(約3千円)にもなる。月給は増えず、毎月4人分のナプキンを買えば給料の1〜2割が消える。

 「通学のバス代や、授業で使う文房具も必要。そっちを優先するなら、ナプキンはあきらめるしかない」

 貧困家庭で育ったザイナブさん。子どものころ、生理が始まると、母親から同じような布地の代用ナプキンを手渡された。「自分の子にはみじめな思いをさせたくなかったのに」。そう言ってうなだれた。