東京都内の総合病院で8月に新型コロナウイルスへの感染が確認された50代女性が、感染者として数えられないまま亡くなっていた。病院から保健所へ「発生届」が提出されないミスがあり、自宅待機中の女性が病院や保健所に問い合わせた際にもミスに気付けなかった。こうした経緯が遺族に伝えられたのは、亡くなってから約7週間後のことだった。 

感染症法は、医療機関に対し直ちに発生届を保健所に提出するよう義務づけており、届けを受けた保健所は感染者から電話で病状を聞き取って治療方針や療養場所を決める。

 ところが、このケースでは感染情報が保健所に届いていなかったため女性は「感染者」に含まれず、保健所による健康観察や食料の支援を受けられなかった。当時は医療崩壊が懸念された第5波のピークで、病院は届け出が漏れた理由を「感染拡大による業務の逼迫(ひっぱく)」と説明している。東京都幹部によると、こうした見落としが都内で明らかになったのは初めてという。

遺族への説明 亡くなった約7週間後

 武蔵村山市の武蔵村山病院や遺族によると、発熱とせきの症状があった女性は8月6日、病院の発熱外来を訪れ、抗原検査で新型コロナの陽性反応が出た。病院はこの日、女性を含め11人の感染をファクスで届け出るはずだったが、手違いで女性の分だけ送っていなかった。

 女性は保健所からの連絡を待つよう病院に指示され、自宅待機を開始。同11日には「保健所から連絡がない」と病院に電話で問い合わせていた。病院は東京都多摩立川保健所(立川市)の電話番号を女性に伝えたが、届けを出していないことには気付かなかったという。女性の携帯電話には同じ日に保健所と約10分間通話した履歴があったが、保健所側には記録が残っていなかった。

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