https://bunshun.jp/articles/-/41039
警察は「7人のグループ」と見立てた
 1984年、「劇場型犯罪」の先駆けといわれるこの事件は、一部上場企業の社長誘拐というかつてない犯行で始まった。「かい人21面相」を名乗る犯人グループは、江崎グリコの社長を誘拐し、10億円と金塊100kgという途方もない要求を突き付けた。社長は自力で脱出したが、その後もグリコヘの放火、脅迫が続く。さらに、ターゲットはグリコ以外の企業にも拡大。丸大食品、森永製菓、ハウス食品、不二家といった有名企業が次々に狙われた。特に「かい人21面相」との全面対決を宣言した森永に対しては、青酸ソーダ入りの菓子を店頭にばらまくといった実力行使に出た。流通業界はこぞって森永製品を撤去、森永は対前年比9割の減産に追い込まれ大きなダメージを受けたのである。

「かい人21面相」とは誰なのか。誰が何のために犯行に及んだのか。今も解決されていない事件の最大の「謎」は「犯人像」である。警察はその威信をかけて、のべ130万人もの警察官を動員し、15年に渡って捜査を続けた。今回、取材班が独自に入手した警察の捜査資料を紐解くと、複雑に人間関係が絡み合う相関図がいくつも現れた。被害企業の周辺が徹底して洗われていたほか、「暴力団関係者」「元左翼活動家」「北朝鮮スパイ」といった記述も見られる。警察は当時、犯人を少なくとも7人のグループと見立て、これにあてはまる組織やグループを中心に捜査を進めていた。