ふるさと納税で531億円が「流出」…PRに懸命な東京23区「何かしらの対応が必要だ」
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ふるさと納税が浸透する中で、東京23区では今年度、区民税の約5%にあたる計約531億円が他自治体に流出した。多くの人が寄付先を選ぶ年末を控え、区側も新たに魅力的な返礼品を用意するなどして、PRに懸命だ。(水戸部絵美)

■料亭遊びも

「これだけの財源を持っていかれれば、何かしらの対応が必要だ」。今年度、区民税約10億円が減収となった東京都台東区の越智浩史・企画課長はそう強調する。10月から返礼品を導入し、本格的にふるさと納税を呼び込むことを決めた。

区内には、上野や浅草など日本有数の観光地があるが、新型コロナウイルス禍で観光客が激減し、地元経済は苦境に立たされている。返礼品には、オーダーメイドの人形や区内醸造のクラフトビールのほか、銀器や浅草切子といった工芸品の制作体験など約360種類を用意。奥浅草にある料亭でのお座敷遊びといったユニークなものもある。

ふるさと納税は、「返礼品競争」の過熱などが疑問視された経緯があり、区は冷ややかに見ていた。しかし、コロナ禍前と比べて観光客が7割減る中で、ダメージを受けた地場産業の回復を目指すため、本格参入を決めた。

上野公園内の老舗レストラン「上野精養軒本店」は、冷凍カレーなどのグルメギフトセットや食事券などが返礼品となる。秋元秀夫総支配人は「コロナ禍で大きな打撃を受けたが、全国の人にPRする絶好の機会」と期待する。

区によると、昨年度の寄付額は約3400万円だったが、今年度は10月の返礼品導入から1か月余で約1400万円が寄せられた。

ふるさと納税では、返礼品をもらわなければ自分が住む自治体に寄付でき、使い道を指定することが可能だ。この仕組みに目を付けたのが世田谷区だ。

昨年度、区民らに新型コロナ対策に充てるとして寄付を募ったところ、約9000万円が集まり、そのうち約75%が区民からの寄付だった。今年からは新たな使途として、子どもの学習支援や、遊び場の拠点整備プロジェクトなどを加え、計17種類の使い道を用意した。区の担当者は「自分の意思で税金の使い道を決めることができるとPRしたい」として、区民にも寄付を呼びかけている。