「完全ワイヤレスもここまで来たか」約4.5万円の衝撃、Noble Audio「FoKus PRO」
FoKus PROがスゴさはここからだ。
まず、アクティブノイズキャンセリング機能だが、5万円近いTWSなのに、なんと搭載していない。これは決して、「搭載するのが面倒だったから」とか、そんな理由ではない。FoKus PROのメインテーマである“音質最優先”を追求した結果、あえて搭載していないのだ。
ご存知の通り、アクティブノイズキャンセリング(ANC)というのは、イヤフォンに幾つもマイクを内蔵し、外部の騒音や、耳まで侵入してきたノイズを検出。その逆位相となる信号を生成し、音楽と一緒に再生すると、ノイズが打ち消され、静かな空間で音楽が楽しめる……という技術だ。
だがこのANC、Noble Audioによれば、“高音質再生”にとって障害となりうるそうだ。
例えば、BluetoothのSoCに搭載しているアンプでユニットをドライブして音楽を再生するわけだが、ANCを使うと、騒音をキャンセルする信号も一緒に再生しなければならないので、アンプの能力を音楽再生だけに100%フルに使うことができない。
さらに、ノイズを検出するためのマイクもいろいろなところに内蔵しなければならないのだが、ただでさえ小さなボディにSoCやらバッテリーやらユニットやらアンテナやらを内蔵しなければならないTWSにおいて、スペースの確保というのは悩ましい問題となる。マイクを内蔵しなければならないのでユニットを大きくできないとか、音質的にベストな場所に配置できない……といった問題も起こりうる。
そういう利便性と音質と天秤にかけざるを得ない問題を“音を良くするために、いっそ全部搭載しない”と、凄まじい割り切りで、本当に“高音質全振り”で作られたのが、このFoKus PROというわけだ。
もっと言えば、最近のTWSでは珍しくない“防水機能”も「音響設計に制約が出る」という理由で搭載していない。もはや“漢らしい”。普通のメーカーであれば、「いや、この価格帯でノイキャン無しなんてお店で売れませんよ」とか「今どき防水無しはありえないでしょ」とか、社内でいろいろ言われてボツになりそうなものだが、本当に“音質全振り”のまま発売してしまうのが、実にピュアなポータブルオーディオメーカーらしくて痛快だ。
ちなみに、価格もTWSとしては高価で、代理店も売れるかどうか心配していたそうだが、販売店に事前にサンプルを聴いてもらったところ、あまりに音が良いということで担当バイヤーから大量発注があり、初回入荷分は既に完売しているというから驚きだ。
また、“高音質全振り”と言っても、外部のノイズを放置しているわけではない。前述のように、カスタム・ユニバーサルイヤフォンのノウハウを用いたシェル形状にすることで、物理的な遮音性を高めている。さらに、付属のイヤーピースも従来モデルから種類が増え、ダブルフランジや横長のものなども同梱。より耳の形状にフィットしたものが選べるようになっている。これらの工夫でそもそも騒音が入ってこないようにすれば、ANCが無くても大丈夫というスタンスだ。多くの有線イヤフォンが、ANCを搭載していない事を考えれば、ある意味“当たり前”の考え方とも言える。
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