空き家窃盗倍増43件 10月末まで

 空き家を狙った窃盗が多発している。県警によると、昨年21件だったのに対し、今年は10月末までに43件と倍増。空き家が増えていることも背景にあるとみられ、県警などはこまめな管理や利活用を呼びかけている。

 「地図アプリを活用して雑草が生い茂ったり、昼間でも雨戸が閉まっていたりする家を探した」。熊本中央署などが摘発した窃盗グループの男たちは、アプリで外観などを確認して狙いをつけ犯行に及んでいた。捜査関係者は「現代ならではの手口」と話す。

 県警は一連の捜査で計53件を立件。 骨董 品や絵画、古銭などが盗まれ、被害総額は約1700万円に上った。グループの一人は調べに対し、「空き家は家人と直接会う恐れがなく、時間をかけることができる」と供述したという。

 別の空き家への窃盗容疑で熊本東署などが逮捕した男は、夜に住宅街を歩き回り、明かりのない家や草が生い茂る家を見つけては門扉に石を置き、数日後にその石の有無を確かめて空き家を確認していた。

 男は家屋解体の仕事に携わったことがあり、空き家にも、貴金属など換金できるものがあることを知っていたという。

 県警生活安全企画課の古城大一次席は「定期的に訪れて庭木の手入れを行ったり、近隣住民と連絡をとりあったりするなどして空き家の犯罪被害を予防してほしい」と呼びかける。



 総務省によると、空き家は全国的に増加している。2018年の調査で全国に約849万戸あり、30年前から約2倍に増加。熊本は約11万2000戸に上り、全ての住宅に占める空き家の割合は約13・8%を占めている。

 老朽化した空き家は景観や防災、防犯、衛生などへ及ぼす悪影響も多く、自治体に寄せられる相談も増えている。熊本市は19年に空家対策課を設置。予防、適正管理、利活用の3本柱からなる市空家等対策計画を掲げ、セミナーの開催や相談窓口の設置、空き家の譲渡所得の特別控除といった対策に取り組んでいる。

 空き家の活用を図ろうと、所有者と利用希望者をつなぐ「空き家バンク」の取り組みも広がっている。県によると、県内では41市町村が実施。県の担当者は「中古住宅という市場に行政が介在することによって、買い手側が空き家に関する情報を得ることができ、円滑な利活用につながる」と効果を期待する。

 県は、講習を受けた建築士が専門的な知識を生かし空き家の利活用にアドバイスする「空家利活用マネージャー」を育成しており、「空家利活用マネージャーに相談し、空き家の有効活用、適正管理に取り組んでほしい」としている。

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