イチゴ1パック、1〜2粒減ります…農家高齢化で生産量減少・原油高が追い打ち

 スーパーや青果店の店先に、真っ赤に色づいたイチゴが並ぶようになった。クリスマスシーズンの風物詩だが、年々、生産量が減り、今年から1パックあたり1〜2粒減らす産地が相次いでいる。

 「年を取ると、たくさんの苗の消毒や水やりなど、長時間の作業が本当にきつい。負担を減らすため、作付面積を2割減らしたんです」。 章姫あきひめ を生産する愛知県豊橋市の大林克至さん(56)はこう打ち明けた。


 地元のJAあいち経済連によると、2010年には約6800トンのイチゴを出荷していたが、その後は減少傾向で、昨年は約6000トンにとどまった。大林さんのように作付面積を減らす農家が増えたためという。

 出荷するパック数が減ると、多くの人に届かなくなるとして、県内の農家約530軒は今年10月から、1パックの量を270グラムから250グラムに減らした。昨シーズンより底の狭いパックを使い、大玉は1粒、小玉は2粒程度少なくした。

 農林水産省によると、2020年の全国のイチゴ収穫量は15万9200トンで、10年前と比べて約1割減った。他の農業と同様に、生産者の高齢化や後継者不足が背景にあり、さらに今年は、原油高で温室の暖房代がかかり、苦しい状況に陥っている。

 イチゴの生産量が全国1位の栃木県でも、JA全農とちぎが今秋から1パックの分量を20グラム減らした。JAに加入する農家の「とちおとめ」の作付面積が昨シーズンより8%減り、今季は約1000トン出荷が減ると見込まれるためだ。

 ほかにもJA熊本経済連(熊本)は19年から、JA全農ながさき(長崎)は今年10月から20グラム減量しており、JA静岡経済連(静岡)も来年2月から行う予定だ。

 青果卸大手「東京青果」(東京)によると、1パックの分量が減っても、現時点で取引価格に大きな変化はなく、1粒あたりの単価が高くなっている。

 東京都港区の洋菓子店「田村町木村屋」では今年、クリスマスケーキの値段を200円値上げした。大塚浩社長(56)は「昨年よりイチゴのパックを多く仕入れる必要がある。原油高で他の材料の値段も上がっており、致し方ない」と話した。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20211216-OYT1T50237/


詰めるイチゴの量を減らしたイチゴパック(右)。昨年までのパック(左)と比べ、底面積が狭い
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