わたしは仕事で中国の深センに出かけたことがあります。ここには、日本の大手電機メーカーの工場があるんです。
工場の稼働は24時間。休みはありません。山間部から出てきた15歳くらいの女の子たちが、1日3交代で働いている。
ある女の子は「ここで働いて、お金を貯めている」と言う。なんのために?

まずは貯めたお金で、弟を大学に行かせる。
残ったお金はお母さんに送るんだと。自分はここで勉強をし、10年経ったら故郷で起業をすると言うんです。
こんな若者たちが中国には山のようにいる。日本の若者にとっては生涯の友人であり、ライバルなんですよね
こういう現実を自分の人生として生きている若者たちがいる。

不思議でならないのは、国内の格差問題に対しては、みんな極端にナーバスになるのに、
世界のなかで日本が格差をつけられていることに対しては、関心が払われないということです。単にこれは「頑張るのがきらい」なだけなのかもしれません。

「わたしは頑張りたくない。楽に生きたい。いまがぬるま湯なら、つかれなくなるまで、つかっていたい」 と考える人もいるでしょう。
それならそれでいい。その権利は誰にもあるわけですから。ただ一つ言っておきたいのは、
「何もやらずに楽に生きる」ための基盤は、みんなが想像しているよりも早く崩れるかもしれない、ということです

以前、鳥越俊太郎さんたちと、あるテレビ番組に出ました。
いま話したような文脈で、「日本の若者は海外に出るべきだ。世界の現状を見るべきだ」と話していたら、
スタジオに抗議の電話がいっぱいかかってきました。視聴者は「大きなお世話だ。ほっといてくれ」と言うんですよ。
ただ、わたしはこう言いました。
「確かにそうだ。若者は自由にやればいい。貧しくなる自由がある。
若者には楽をして貧しくなる自由があるから、選べるなら選べばいい。
その代わり、頑張って豊かになった人に対して文句を絶対に言うな。君たちが貧しくなる理由を選ぶんだったら、それはそれでいい」

https://diamond.jp/articles/-/85299