ここでちょっと蛇足な的なことも書いておきたい。日本企業の中からAppleに相当する位置を占められそうな会社があったことだ。ソニーである。ソニーは今でも立派な会社で、画像センサーを中心に落ち込んだ日本半導体の中のエースといえる。
しかし、2000年代を考えてみると、Appleの進出を「食い止められた」可能性を持つ唯一の会社ではなかったかと思う。AppleのiPhoneは、2000年代も末の登場だが、その登場前にプレリュードともいうべき助走期間があった。iPodの時代だ。
iPod以前のAppleは、「おしゃれ」なパソコンメーカーではあったが、Microsoftのお情けで生き延びているといった風評があるくらいの状態だった(Appleが潰れると、Windows OSのシェアが100%になって、独禁法に引っ掛かるなど)。それが、iPodで携帯型音楽プレイヤーという、当時のカテゴリーでは家電的な世界に進出、さらにインターネットとコンテンツの配信という今日の主流ビジネスへの足掛かりを作っていくことになる。iPodの成功があったればこそ、iPhoneがあり得たのではないかと思う。
「もし」iPodが失敗していたら(Appleはモバイル端末、Newtonでは失敗している。このときもCPUはArm)、iPhoneはなかったのではないか。iPodを止めえたとすれば、iPod以前、携帯型音楽プレイヤーの頂点に立っていた「Walkman(ウォークマン)」のソニーしかないだろう。そして、ソニーはコンテンツ事業も傘下に持っていたのだ。iPodの立ち上がりを全力でたたいて挫折させていたら、今のAppleの立場をソニーが得ていた可能性もあっただろう。戯言(ざれごと)だ、忘れてくれ。
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