「死んでいるのはわかっていた」「働くことができなかった」…80代父と50代兄の遺体を放置し続けた男性が明かした事件当時の“胸の内” から続く
「自身で働かず、父親の金に頼る生活をしていた。父親の死亡によって将来への不安が募り、適切な対応を取らず遺体を放置した」
同居する86歳の父親が亡くなり、半年あまりにわたって遺体を放置したとして逮捕された小谷守さん(54歳・仮名)の法廷でのやり取りの一部である
「事件のあと部屋の整理を進めるなかであるものが見つかった」と私たちに見せてくれた。
差し出されたA4サイズのノートは、縦書きの文字でびっしりと埋め尽くされている。文書の冒頭には、「今までを振り返っての思い出と反省点」と記されていた。就職してからの体験や感じたことを書き留めたものだという。
〈「初めて給料をもらったときはとてもよかったなあと思った」
「働く前までは親に食べさせてもらっていたが、これで自分で生活することができたんだと思った」〉
初めのうちは、給料をもらったことなどへの喜びが記されていたが、次第に仕事に対するつらい思いが占めるようになっていく。
〈「はじめての仕事はつらくて嫌になって時々休むようになった」
「仕事の時間は朝9時から夜9時半ごろまで。休みは週1回。嫌気がひどくなりとうとうやめることになった」〉
すぐに辞め、また新たな職場に移るという繰り返しが綴られていた。そのうちに徐々に自らを責める記述が増えてくる。
〈「後から入って来た人は器用に仕事をこなしていて到底太刀打ちできない」
「これからどうしたらいいのかと思うとともにこの社会でやっていけるのかと思った」〉
小谷さんは人と会話をしていると時折言葉に詰まってしまい、おどおどしてしまうことがあるという
こうした話を聞いているうち、父親の死を言い出せなかった小谷さんの気持ちが少しわかるような気がした
「(父親が)亡くなったときはもう、将来がちょっと……どうやって生きていけばいいのか。仕事もしていないし、この先、生きていかれるのかというのが頭によぎって……」
父親の遺体を放置したのは、目の前にある現実からの逃避かもしれない。しかし、先々への希望がなければ、目の前で起きたことに対処する気力は起きないだろう。遺体を放置してしまったことは、その結果だったのかもしれない。
世代間格差よりも増える大人の引きこもりが問題だと思う「背景」にもっと目を向けなければ、本人の未来にはつながらないと感じた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6efb695ebb4d388268ad48f2de1ebae20c0f01b0?page=1