筑波大生 農家に「助っ人」派遣 定植や収穫、撤収支援
■人手不足補う
筑波大(茨城県つくば市)の学生団体「つくば学生農業ヘルパー」が活躍している。筑波大と同大大学院の学生約60人が所属し、人手が必要な農家の元に、学生を有償で派遣する。学生だけの運営で移動手段が限られるため、活動範囲はつくば市周辺に限られるものの、主に定植や収穫、収穫後の撤収などの作業を担う。農家は人手や後継者が慢性的に不足しており、農業を側面支援する新たな「助っ人」に注目が集まる。
■契約農家20軒
12月上旬の週末。つくば市の農家で、収穫作業の終わったパプリカのビニールハウスに学生がいた。茎から支柱に結んであったひもを取り除き、倒れた草を集めていった。
団体は2001年に設立。現在、契約農家が約20軒あり、定期的な依頼を中心に活動している。アルバイトではなく、有償ボランティアとして農家に学生を派遣し、時給を受け取る。
代表で同大3年の山口諒さん(20)は、有償ボランティアのメリットを「たくさんの農家と交流できる。アルバイトだと交流する農家が限定されてしまう」と説明する。さまざまな作物を扱う農家と関わることで、農業の知識だけでなく、対人関係を学ぶことができるという。
■引き継ぎ工夫
農家側の利点としては、継続的に雇用する必要がないため1日限りの作業依頼ができることや、早朝の作業や直前の依頼でも対応可能な学生がいれば派遣を受けられることだ。一方で、免許が必要な作業や高い習熟度を要する仕事を依頼するのは難しい。
つくば市水堀でスイカやパプリカなどを生産している高山裕康さん(41)は、「参加している時点で楽しいと感じてくれている学生ばかりだ」と目を細める。
高山さんは、6月から週3回、約3時間の作業を依頼。「毎回同じ学生が来るわけではないので、習熟度が上がるまで時間がかかる」としつつも、「資料を作成して引き継ぎをするなど、工夫して情報共有してくれる。収穫などの作業を任せて、自分たちは別の作業に専念できるので助かる」と話す。
■橋渡し役
卒業後に就農する学生もいるが、一握りだ。多くは農業と全く別の学問を専攻する。山口さんもその一人で、大学では地質学を専攻、将来は地質学者を目指す。
山口さんは「農業で得た知識や経験が地質学とつながる可能性もある。学生のうちにできることはやっておきたいという気持ち。社会に出てからこの経験が生きるはず」と語る。
団体は学生の立場から「担い手不足」という農業の課題に向き合う。山口さんは「労働力としての役割を果たすとともに、学生と農業の橋渡し役として、農業の担い手を生み出していきたい」と展望している。
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