兵庫県の赤穂市民病院で昨年1月、腰椎の手術を受けた70歳代の女性が歩行できなくなるなどの重度の後遺障害が残ったとして、女性と家族が市と執刀した当時の医師を相手取り、約1億1500万円の損害賠償を求める訴訟を地裁姫路支部に起こした。

 病院側は医療過誤は認めているが、医師が手術中に起こしたミスなどについて十分な説明がなかったとして提訴に踏み切った。医師が関わった他の7件でも医療事故が起きているが、病院側は「手術が直接的な原因とはいえない」としている。医師と病院側はいずれも棄却を求めている。

 訴状によると、女性には重い腰痛があり、医師の執刀で腰椎の一部を切除する手術を受けた。この際、ドリルで骨の切削操作中に硬膜を傷つけ、露出した神経を切った。女性は手術直後から脚がまひして歩くことができなくなり、ぼうこうや直腸にも障害が残ったという。

 医師は手術前に「早くしなければ人工透析になる可能性がある」などと説明したが、原告側は根拠はないと主張。術後の説明でも神経損傷の有無について「神経かわからない」と曖昧な説明だったとしている。

 医師は2019年7月に同病院脳神経外科に採用された。着任から1年で8件の医療事故が報告され、外部有識者が検証。女性については、同病院が医療安全対策実施要項で定める医療事故の区分で、2番目に重大な「レベル4」(障害や後遺症が一生続く場合)に該当すると認定された。他の7件は医療過誤にはあたらないと判断した。

 医師は20年3月以降、手術の執刀などを禁止される処分を受け、今年8月に退職している。

 原告代理人によると、女性の家族は「医療事故を続けていた医師なのに、なぜ執刀させたのか経緯を知りたい。説明も十分ではなく不誠実だ」と話しているという。病院側は「係争中で答えられない」としている。

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