東京五輪で考える日本と世界の性教育の差 選手村で配られるコンドームから見えること
https://news.yahoo.co.jp/articles/316ee4bedaa60879278e784c07e7384b4776f3b0

「THE ANSWER the Best Stories of 2021」、日本の性教育の課題とは

東京五輪の開催で盛り上がった2021年のスポーツ界。
「THE ANSWER」は多くのアスリートや関係者らを取材し、記事を配信したが、その中から特に反響を集めた人気コンテンツを厳選。
「THE ANSWER the Best Stories of 2021」と題し、改めて掲載する。
今回は2008年北京、2012年ロンドンと五輪2大会に出場した競泳の伊藤華英さんが五輪期間中に様々なメッセージを届けた「オリンピアンのミカタ」より、「東京五輪で考える日本と世界の性教育」。

大会前に選手村にコンドームが配布されることが世間の関心を集め、その後、今大会は取りやめとなった。
本来、選手村で配られる意味、その裏にある日本の性教育の課題とは。
自身も月経教育を行う立場から考えを明かした。(構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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選手村でコンドームが配られるようになったのは1988年ソウル五輪から。

2004年アテネ五輪からは国連とも連携して活動しています。その理由にあるのは、エイズ(HIV/AIDS、ヒト免疫不全ウイルス・後天性免疫不全症候群)などの性感染症。
日本で生活していると実感しづらく、意識は違いますが、世界では大きな課題になっています。

私は学生向けに“女性アスリートと生理”ついて発信・啓発する「1252プロジェクト」という教育プログラムを行っています。
いろんな学校で講義を行い、平均13〜14歳で迎える初潮について、そういう若い世代になぜ生理が来るのかなどを教えています。

実際に教育現場に触れ、強く感じるのは日本の性教育の浅さです。

例えば、イギリスで育った友人に聞くと、避妊具を中学校のうちに触る機会があったといいます。
男女一緒の教室で、コンドームやペッサリーを触ったりする。それを男の子も女の子もやる。そういう教育が、欧米では当たり前の感覚です。

アフリカのタンザニアでは性暴力を対策する意味でコンドームを持ちなさいと教育を受ける。世界で理由は異なりますが、日本では具体的に教えてくれない。
知人の産婦人科の先生も「つけ方も教えてもらえないのにどうやって使うと(大人は)思っているんだろう」と首をひねっています。

その背景には、月経に関する話題が不純な方に意識が向きがちな現実があります。婦人科に行く若い子が年配の女性に白い目で見られてしまう。
だから悩んでいても足を運びにくいと聞き、日本の性教育の遅れの象徴のように感じています。

選手村のコンドームには根本的に感染症の予防啓発のために配布されています。
これらの感染症はアスリートをはじめ、若者の未来を奪うこともあり、深刻な差別や経済窮困も伴うこと。
今回の一連の日本での反応を見てもなかなか伝わりくいかもしれませんが、自分の身は自分で守りましょうというメッセージが込められています。