水俣病の歴史、後世に伝える 写真家9人の20万カットを共同管理へ
12/21(火) 9:30
毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/906393499523cf4fa92e310274bbbceacdf6b069
水俣病の歴史を写真で後世に伝えようと、患者などを撮影してきた写真家9人（故人含む）の
作品などを共同管理する取り組みがスタートした。
プロジェクト名は「水俣・写真家の眼（め）」。
計20万点超のカットなどをデジタル化して保存・活用を図るもので、
関係者は「一枚一枚の写真が歴史を伝え、人類の過ちを検証する役に立つと確信している」と
9人は1960年から撮影を始めた桑原史成（しせい）さん（85）＝東京都＝や、
水俣病を世界に伝えた米国人写真家ユージン・スミス（故人）の元妻、
アイリーン・美緒子・スミスさん（71）＝京都市＝ら。
来年5月にもプロジェクトと同名の社団法人を設立し、具体的な運営方法や、
資料の活用策などを話し合っていく。
9人が撮影を始めた時期は60〜80年代と異なるが、患者の苦しみだけでなく、
水銀で破壊された自然や生き物の姿などを写真に収めてきた。
水俣の受難を伝え、歴史の風化を防ぐ役割を担う作品だが、
膨大なフィルムなどの多くは各自で保管され、散逸の懸念が指摘されていた。
桑原さんら写真家自身が、保存に向けた方法を2017年からウェブ会議などを開いて模索し、
たどり着いたのが作品や取材ノートなどの共同管理だったという。
将来は、地域に残る写真の収集なども視野に入れる。
70年代に一時、水俣に移住して撮影した小柴一良（かずよし）さん（73）も、名を連ねた一人。
現在は大阪から水俣に足を運び、患者の日常を追っており
「市民向けの写真展に貸し出すなど、人類の負の遺産としての水俣病を
50年後、100年後の人に知ってもらう方法を模索したい」と話した。【西貴晴】
◇水俣病
チッソ水俣工場（熊本県水俣市）の排水に含まれたメチル水銀が魚介類に蓄積し、
それを食べた人に発症した中毒性の神経疾患。
1956年5月1日、工場の付属病院長が患者発生を水俣保健所に報告したことで公式確認された。
国は68年9月26日に公害病認定。その後の訴訟で、被害を拡大させた国や熊本県の責任も確定した。
