コロナ禍で11年ぶりに自殺が増加した。中でも女性の自殺は全ての世代で増加となった。
なぜ女性の自殺が増えたのか
令和2年の自殺者総数は2万907人で、男女別の内訳は男性1万3914人、女性6993人で、例年と変わらず男性が女性を大きく上回る。
しかし増減率で見ると、男性の自殺はむしろ減り、反対に女性の自殺は全ての世代で増加となった。
自殺の数は男性が多いが、実は例年、うつ病の診断は女性のほうが多い。
これは、女性は女性ホルモンが急激に変化しやすいためだ。
思春期・産前産後・更年期などに情緒不安定になったり抑うつになったりする。
そのためうつ病が多いことと、女性のほうが「眠れない」「気分が沈む」と気になったらすぐに受診行動をとることによるものも大きい。
ストレスの要因も、男性は仕事など家の外にあるが、女性は子育て・育児・DVなど家の中にあることが多い。
自粛で家族といる時間が増え、コロナ前から緊張状態が高かった家庭は、さらにその状態は高まっている。
新型コロナ感染に関して、男性よりも女性のほうが、不安が強い傾向もある。
実際、「コロナが怖くて学校に行けない」という子どもの、ほとんどのケースでは、母親が過剰にコロナ対策をしていた。
では通常、女性が男性より自殺が低く抑えられてきているのはなぜか。
それは、女性は男性より他者と会話し、会話によってストレスが軽減されていたと考えられてきた。
しかし、コロナ拡散防止のため食事・カラオケ・旅行などすべて自粛が求められた。
緊急事態宣言が解けて、日常が再開しても食事をするのは「黙食」、温泉に行っても「黙浴」でおしゃべりができない。
ストレス要因は上がり、ストレス発散要因が下がり、結果として、メンタルヘルスのリスクが上昇している状態にあるのだ。
女性の自殺が増えた背景に、コロナ禍で子育てが「孤育て」になっていることがあるのではないか、といろんな場面で感じる。
このコロナの時期の妊娠自体も、感染を恐れて不安であろう。
そしていざ、出産となったら、実家から産前産後に手伝ってもらえない、里帰り分娩ができないなどの問題がまず生じ、不安なまま出産を迎えることとなる。
出産後も、子育てサークルが自粛縮小され、ママ同士のリアルなつながりもなくなっている。
また、保育園や学校が休校になると、ママ業はさらに激務化する。
そして自粛で外に連れてもいけないとなると、家で見るしかない。
夫はリモート勤務で、「リモート会議中は子どもを黙らせろ」というので、会議中2時間、近所を子どもたちと徘徊はいかいして過ごしたという母親もいた。
一人ひとりの事情を聴くと、本当にいろんな面でコロナ禍が子育てに影響しており、妻は夫への不満も募らせている。
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2021.12.22
https://president.jp/articles/-/53067