焦点:日本の財政再建は時間との戦い、高齢化で対外純資産縮小へ
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<財政赤字膨張と日本の「なぞ」>
財政赤字の膨張する国では、中南米の国々が代表例だが、長期金利が大幅に上昇し、国家予算の編成に支障をきたすケースも少なくない。ところが、日本では日銀によるイールドカーブコントロール政策(YCC)の下で、長期金利はゼロ%前後に誘導され、市場が混乱する様子は全く見えない。

この日本の「なぞ」について、ある外資系証券の関係者は「確かに日銀のYCCの存在が大きいが、その裏には日本が抱える膨大な対外純資産の存在がある。この対外純資産があるため、海外勢が日本国債売りを仕掛けようにも、成功すると思って追随する投機筋が現れない」と説明する。

財務省によると、日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産残高は、2020年末で356兆9700億円となり、30年連続で世界最大の対外純資産国となった。今は、国内の余剰資金で政府の財政赤字を吸収できている状態だ。

だが、日本では少子高齢化が進み、人口構成比の大きい「団塊の世代」のほとんどが75歳以上になる2025年以降、医療費や社会保障費が急増し、マクロ的には対外純資産も徐々に取り崩され、将来的にはこの「お宝」が枯渇する時期がやってくるとみられている。

対外純資産がなくなる時期について、正確な試算を出している例はないが、複数のエコノミストは今後、10年から20年の間に対外純資産が食いつぶされる可能性が高いとみている。