2019年に31年ぶりに商業捕鯨が再開してから、今年で3年目を迎えた。過去2年間は、「商業」とは名ばかりだった。鯨肉の卸売市場規模が年25億円程度なのに対し、昨年度の水産庁の補助金は倍の51億円。まさに補助金漬けである。

 捕鯨業の中核を担う共同船舶は6月の株主総会で、老朽化した捕鯨母船「日新丸」の後継船の建造計画を決めた。100億〜150億円と想定された建造費を約60億円に抑え、その全額を融資やクラウドファンディングでまかなう。同社への補助金も今年度からは貸し付けに改められた。

 「官製捕鯨」からの脱却に向けた一歩として評価できる。

 ただ、疑問も残る。水産庁は商業捕鯨を日本の排他的経済水域に限って認めているにもかかわらず、後継船は南極海でも操業できる仕様を検討中だ。長い航続距離を確保し、船体も氷による損傷に備えた構造にできないかを詰めている。

 商業捕鯨再開にあたっては、当時官房長官だった菅首相が「南極海では捕獲を行わない」と表明し、国際社会の理解を求めた経緯を忘れてはならない。南極海での捕鯨は、豪州を中心に国際社会から猛反発を浴びるのが必至である。

 共同船舶の所英樹社長は、「南極海に行くのは食糧危機の時」と説明するが、そのような事態になった際、南極海で捕獲した鯨を運ぶ多数の運搬船や燃料を確保できると考えるのは、非現実的だ。南極海での操業を断念すれば、建造費を更に節約し、経営の自立につなげることが期待できる。実際に後継船を入札するまでに、仕様を見直して欲しい。

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